飲食店の保険はコレで決まり!食中毒や火災事故を一括で守る最強の保険

甲斐承太郎

もし、食中毒を起こしちゃったり、火事になったり…
そんなときは、お店はどう責任を取ればいいんだろう?
保険でなんとかなるの?
それとも全部お店の自腹になるの……?

アカガネ所長

飲食店は、火災だけじゃなく
「お客さん」「料理」「設備」「営業停止」など
住居では起こらない責任がたくさんあります。
この記事では、
“食中毒やケガが起きたときにどの保険が助けてくれるのか”
を一つひとつ事故ベースで整理していきます。
難しい言葉は使わず、ワンオペ店でも理解できるように実例で解説します。

この記事でわかること
  • 食中毒・転倒・ヤケドなどの事故が起こったとき、どの保険が対応するのか
  • 施設賠償保険とPL保険の違い(事故によって補償が変わる理由)
  • 結局、個人の飲食店はどんな保険に入ればいいのか(店舗総合保険の立ち位置)
シマナガ

飲食店で起こる“ほとんどの事故”は、
施設賠償保険(ケガ)とPL保険(食中毒) の2つで補償します。
これを一つにまとめて契約できる
“賠償付き店舗総合保険”が最もシンプル です。

この記事を書いた人

こやけ企画代表:たがわひでゆき

たがわ ひでゆき

所有資格:行政書士・簿記2級
趣味:プロレス

1983年生まれ、旭川出身。
飲食店開業支援を手掛ける『こやけ企画』の代表。
長年運送業に従事しながら、キャリアチェンジを目指して3度目の挑戦で行政書士試験に合格。

脱サラを目指す方々に向けて、楽しくわかりやすく飲食店開業ノウハウを発信するブログ『脱サラ物語』を運営中。
将来、行政書士として独立開業することを目標に、日々準備を進めています。

私生活はサラリーマンとご当地レスラー「イソロク」として2足のわらじで活動中

目次

第0章:保険用語がいっぱい!?まずは“保険の基礎”をおさえる

甲斐承太郎

でもさ…。
マンション借りたときに加入した火災保険で窓ガラス割れたときも自転車盗まれたときも補償されたんだよね。
じゃあ飲食店も火災保険だけ入ればいいんじゃないの?
なんで“施設賠償”とか“PL学園”とか、難しい名前の保険が出てくるんだ?

アカガネ所長

パーフェクトリバティーでも損益計算書でもありません。
マンションの火災保険は「個人の生活」に関係する事故を広く浅くカバーしています。
私生活と飲食店では保険事情もちょっと変わってきます。

しかし飲食店は…
  • お客様をケガさせる
  • 料理で健康被害を出す
  • 店が壊れる
  • 営業できなくなる
シマナガ

こうした “事業特有の事故” が多数あります。
生活保険(マンションの火災保険)とは事故の種類がまったく違うんです。
だから、飲食店では火災保険 だけでは絶対に守りきれない。
事故の“責任の向き”が違うからです。

★保険の根本構造(飲食店版)

責任の向き起きること入るべき保険
店を守る保険火災・風災・水漏れ・設備破損・盗難火災保険
客を守る保険転倒・火傷・服の汚れ・設備落下施設賠償責任保険
料理を守る保険食中毒・異物混入・アレルギー表示ミスPL保険(生産物賠償)
アカガネ所長

マンション火災保険は
「建物・家財を守る保険」 であり、
飲食店のような “対人の賠償責任” はほぼ守れません。
これが誤解されやすいポイントです。

ここで整理!保険の専門用語

甲斐承太郎

なんか保険セールスマンってよく「保険特約でお得!」とか「免責10万円で保険料がお得に!」なんかよくわからない日本語とか使うから詳しく教えてよ

アカガネ所長

特約やら免責やら馴染みのない言葉が出てくるのが保険の世界のあるあるですね。
よく使われる保険用語をまとめました。

保険の専門用語

用語意味
付帯本体の保険に“追加でくっつく要素”。ラーメンに味玉を乗せる感覚。
特約保険の能力を強化する“追加オプション”。PL保険の「食中毒見舞金」など。
免責自己負担額。「ここまで自腹です」というライン。免責5万円なら5万円以下は出ない。
支払限度額保険が“最大でいくら払うか”という上限額。1事故あたり1億円など。
補償範囲保険がカバーする事故の範囲。「出る事故/出ない事故」の線引き。
不担保補償対象外。火災保険における地震・津波が代表例。
約款保険の“成分表”。支払われる条件・対象外・上限などが全部書いてある。
損害額事故によって実際にかかったお金(修理代・治療費など)の総額。賠償額の基準になる。
シマナガ

提示例を具体的に解説します。

【1】「特約でお得!」と言ってくるパターン

  • 意味:
    • → 本体の保険に“追加パーツ(特約)”をつけて、補償を広げましょう、という提案です。
  • たとえば
    • PL保険 +「食中毒見舞金特約」
    • 火災保険 +「休業補償特約」みたいなイメージですね。
  • ポイント
    • 補償が“横に広がる”=守れる事故の種類が増える
    • そのぶん保険料も「ちょっとずつ」上がる
    • 飲食店の場合、「食中毒」「休業補償」みたいに“事故が起きたら一発で終わるリスク”に特約を回すのはアリ
  • 注意点
    • なんとなく全部おすすめされるままにつけると「フル装備ラーメン」状態で高額になる
    • 「それ、うちの店の規模で本当に必要?」と一度立ち止まるのが大事

【2】「免責10万円で保険料がお得に!」パターン

  • 意味:
    • → 「小さい事故は自腹にする代わりに、月々の保険料を安くしましょう」という提案です。
  • イメージしやすい例
    • 免責5万円のとき
      • 事故:30万円の損害→ 店の自己負担5万円/保険から25万円
    • 免責10万円のとき
      • 事故:30万円の損害 店の自己負担10万円/保険から20万円
      • この「最初の〇万円までは必ず自腹」が“免責”です。
  • ポイント
    • 免責を「高くする」ほど、毎月の保険料は下がる
    • 逆に、事故が起きたときの“現金ダメージ”はデカくなる
  • 注意点
    • 「ケガ・軽い物損」が多い業態で免責を高くしすぎると、出る事故のたびに自腹ゾーンに引っかかって、「結局ほとんど保険が出ないじゃん…」となりやすい
    • 手元キャッシュに余裕がない開業直後は、免責を上げすぎるのはかなり危険
シマナガ

お客さんのケガ → 施設賠償
食中毒 → PL保険(生産物賠償)
店そのものの損害 → 火災保険(建物・設備)
営業できなくなった損害 → 火災保険の休業補償特約
そして、これらをバラバラで加入すると管理が煩雑になるため、実務上は全部ひとまとめにした“店舗総合保険”で網羅するのが最も効率的 です。

第1章:飲食店で起きる事故から守る3つの保険

甲斐承太郎

ここまで読んでなんとなくわかってきたけどさ…。
実際、お店で起きる事故っていろいろあるよね?
食中毒やら料理をこぼしたとか、ケガさせたとか、ガラス割れたとか
これら全部に、違う保険が使われるってこと?
名前が似てるから、まだどれがどれに当てはまるか混乱するんだよ…。

アカガネ所長

そこで重要なのが 「事故→補償→どの保険?」の順番で理解すること」 です。
飲食店が扱う保険は、大きく3種に整理できます。
・施設賠償責任保険(店の管理ミスでお客がケガ)
・PL保険(生産物賠償責任保険)(料理が原因の事故)
・火災保険+休業補償特約(店そのものの被害+営業損害)
これを一度 事故から逆算 すると、むしろ簡単になりますよ。.

事故と保険の対応表

守りのポイント発生しやすい事故例補償される内容該当する保険
お客を守る保険店内で転倒してお客さんがケガした治療費・慰謝料施設賠償責任保険
熱い料理をこぼしてヤケドさせた治療費・慰謝料施設賠償責任保険
料理を守る保険提供した料理で食中毒が出た治療費・慰謝料PL保険(生産物賠償責任)
食中毒で営業停止になった営業損害食中毒見舞金(PLの特約)
お店を守る保険店が火事・水漏れ・台風で壊れた修繕費火災保険(建物・設備)
盗難で店の扉・レジが破損修繕費火災保険(盗難)
火事・水害で営業できない売上損害休業補償(火災保険の特約)

① 施設賠償責任保険:店の管理ミスによるケガを守る

飲食店の“最も高額化する事故”を守ります。

床が濡れていて転倒お客様の治療費・慰謝料
店の段差でつまずいた治療費・慰謝料
運んだ料理が当たってヤケド治療費・慰謝料

ワンポイント
  • “料理以外”の店内事故はすべて施設賠償
  • 飲食店で最も請求頻度が高い保険
  • 従業員のケガは対象外(労災)

② PL保険(生産物賠償):料理が原因の事故を守る

飲食店の“最も高額化する事故”を守ります。

食中毒治療費・慰謝料
異物混入(ガラス片・金属片等)治療費・慰謝料
アレルギー表示ミス治療費・慰謝料

ワンポイント
  • “料理そのもの”が原因かどうかで判断
  • 大規模になれば数百万円級
  • 営業停止はPL保険では出ない(特約の食中毒見舞金)

③ 火災保険:店そのものの損害を守る

火を扱う飲食店のための保険

火事で厨房が焼けた修繕費・設備買い直し
台風で看板が飛んだ修繕費
水漏れで厨房機器が壊れた修繕費

ワンポイント
  • 必ず入っておこう休業補償特約
    • 火災・水害で営業できないときの“売上ゼロ”を補償する
    • 飲食店では実質必須

第2章:なぜ店舗総合保険が最も合理的なのか

甲斐承太郎

なるほど…。
ケガは施設賠償、食中毒はPL、火事は火災保険、営業できなくなったら休業補償…。
わかったような気がするけど、
こんなの個別に全部入るなんてムリじゃない?
管理も大変だろうし、どの会社のどの保険に入ったか絶対こんがらがるよ。

アカガネ所長

はい、そこです。
まさにその“めんどうくささ”を解消するために存在しているのが
店舗総合保険(テンポソウゴウホケン)です。
これは飲食店・小売店・サロンなど
「店舗を構える事業者のために設計された保険」で、
実際の中身はこんな構造になっています。

店舗総合保険の中身(構造図)

事故の種類単体の保険店舗総合保険だと…
店内事故(ケガ)施設賠償責任保険そのまま内蔵されている
食中毒・異物混入PL保険そのまま内蔵されている
店が壊れた(火災・水漏れ等)火災保険基本補償としてセット
食中毒で営業停止食中毒見舞金(特約)オプションで追加可
火事で休業休業補償特約オプションで追加可
盗難で扉破損火災保険(盗難)基本補償の範囲内
シマナガ

ここでわかる通り、
店舗総合保険とは “複数の保険を一冊にまとめた教科書” みたいなもの。
飲食店が必要とする保険が最初からパッケージ化されています。

店舗総合保険の主な特徴

  • 多角的なリスクカバー
    • 火災、落雷、破裂・爆発などの自然災害による損害。
    • 盗難による商品や店舗備品の損失。
    • 給排水設備の事故や他の戸室からの漏水による損害。
    • ガス漏れなどによる破裂・爆発、外部からの衝突・飛来による損害。
  • 補償の多様性
    • 通常の火災保険に加え、店舗運営において考えられる多種多様なリスクに対応。
    • 集団行動による暴力行為や破壊行為による損害も含む場合がある。
  • コスト効率
    • 複数の保険を個別に契約するよりも、一つのパッケージで広範な保険カバーを得られる。
    • 保険料は店舗の状況や規模、リスクの種類に応じて変動する。
  • カスタマイズ可能性
    • 店舗の具体的なニーズやリスクプロファイルに合わせて、保険内容をカスタマイズ可能。
アカガネ所長

店舗総合保険は、飲食店経営に伴う様々なリスクに対して、総合的な保護を提供します。
これにより、個別の保険に加入するよりも効率的にリスクをカバーでき、特に小規模な店舗や個人事業主にとって、経済的負担を軽減しつつ必要な保護を確保することが可能です。
保険の詳細内容や補償範囲は保険会社やプランによって異なるため、具体的なニーズに合わせて選択することが重要です。

シマナガ

保険内容は必ずじっくり確認して契約するようにしましょう。
いざ、事故があった際に補償に組まれていなかった。
そんなことにならないように注意しましょう。

第3章:店舗総合保険はメリットたくさん

甲斐承太郎

なにこれ!めっちゃいいじゃん!
なんでみんなやらないの?
もっと店舗総合保険について教えてよ!

アカガネ所長

具体的には次の4つのメリットがあります。

  • 複雑な保険を一括管理できる(超わかりやすい)
    • 賠償、火災、盗難、食中毒、休業… 多岐にわたるリスクを一契約でカバー。
    • 多くの論稿が「一つの契約で多面的なリスクをカバーできる」と記載
  • 個別に入るより保険料が割安になりやすい
    • 同一店舗で複数の保険を個別契約すると手続き・重複割り・割高化する。総合契約ではコストメリットあり。
    • 補足:ただし、補償金額・免責・上限額は必ずチェック。安いだけではリスクが残る。
  • 店舗の規模に合わせて特約を足すだけで済む
    • 「カフェ」「焼肉店」「ラーメン店」など業態によって、特に強化すべきリスクが異なる。
    • 複数記事で「補償内容を自店舗の業態・規模に応じて設計可能」と記載。
    • 例:焼肉店=火災リスク高め・水漏れも注意/ラーメン店=厨房水・油・配管リスク高め。
  • 事故が起きたとき、窓口が一本化されている
    • 「今回は盗難?火災?食中毒?…どれ契約?」という迷いを減らせる。
    • 解説資料では「包括的な契約で安心感がある」と書かれており、事故対応の単一窓口化を暗示。
    • 注意点:契約会社・代理店によって“事故分類・窓口対応”の質が異なるため、契約前に「事故時の対応窓口」を確認すべき。
アカガネ所長

個別保険は理論上は正しいのですが、飲食店のようにリスクの種類・発生頻度・損害規模が大きい業態では“管理コスト+見落としリスク”が高まります。
店舗総合保険は、その観点から“使う側の視点”でパックプランでとても便利ですよ。

シマナガ

つまり、飲食店で本当に必要な補償=施設賠償・PL(生産物賠償)・火災・休業補償… これらを、
“一つの窓口”で管理できるということです。事故が多岐にわたる飲食業態では、店舗総合保険を中心に据える構成が最も実務的と言えます。

甲斐承太郎

よし!さっそく保険会社のパンフレットで保険内容を要チェックやで~

第4章:特約を深掘りして「本当に必要な補償」だけ見極める

甲斐承太郎

ってさ、店舗総合保険が便利なのはわかったよ。
でもさ……結局「特約を付けないと出ない」ってやつ、多すぎない?
どれが必須で、どれが“保険屋のおすすめ営業トーク”なのか
結局わからないんだけど!

アカガネ所長

そこが飲食店の“落とし穴”なんです。
店舗総合保険のベース契約だけだと 経営が止まる事故がカバーされていない 場合が多いんですよ。
だから今回は
飲食店が必ず検討すべき特約だけに絞って
役割と金額感をまとめます。

① 食中毒見舞金(=営業停止の補償)

これが無いと何が起きる?
  • 保健所から「○日間営業停止!」
    • → 売上ゼロになる
    • 仕込み食材を捨てる
    • 人件費も発生する
    • 家賃・光熱費はそのまま

つまり、現金が一気に蒸発する事故。

●補償のイメージ例

事故内容補償のイメージ例
3日間の営業停止1日2万円 × 3日=6万円
仕込み食材の廃棄数万円(特約による)
特約によっては、廃棄した仕込み食材の損害も別枠で補償

※実際の日額や上限額は保険会社・商品によって違います。
 例として、ある店舗総合保険では「1日あたり20万円、1事故100万円まで」など、
 日額を数万円〜数十万円単位で設定するタイプが一般的です。

アカガネ所長

食中毒の賠償はPL保険で守られるけれど、
あなたのお店の売上ダウンはPL保険では1円も出ません。

シマナガ

営業停止の補償は特約を入れないと“絶望的に穴が空く”
ので必須級です。

② 休業補償特約(火災・水漏れ系)

これが無いと何が起きる?
  • 上階の水漏れで天井が落下 → 数週間営業不可
  • 厨房の火災で店舗全損 → 半年ほど営業できず
  • 営業できないのに、家賃・人件費・光熱費など固定費だけが走る
    • → 資金が急速に消える「経営断絶リスク」へ直結

●補償のイメージ例

内容実際に出るお金の例
家賃月20〜30万円
人件費数十万円(スタッフ雇用ありの場合)
光熱費などの最低維持費数万円
売上消失の補填店舗の通常売上規模による
アカガネ所長

このように、休業中でも出ていくお金だけが増え、入ってこない売上が続く構図を、休業補償特約は「営業停止期間の日数×日額」などで補填することで、経営の立て直しの時間を稼ぎます。
(例:ある商品では1日あたり数万円~を設定可能)

なぜ小規模店ほど重要か
・ワンオペや少数スタッフ運営だと、数週間の休業=月次収支ゼロに近づく
・固定費を支える内部留保が少ないため、一度の休業で資金が枯渇する可能性が高い
→ つまり、休業補償特約は“経営存続”を守るための最重要パーツと言えます。

注意点

  • 補償対象や日額・支払限度日数は保険商品により異なります。契約前に「約款」「重要事項説明書」を必ず確認しましょう。
  • 地震・噴火・津波・戦争など、免責・不担保扱いされるケースが多いので、その点も確認が必要です。
  • 「固定費だけでなく売上そのものを補填する」タイプは限られており、多くは“営業ができなかった期間の粗利益”を基準に日額が設定されています。

③ PL保険拡張(飲食店向け)

※基本セットでも入っていることが多いが、“支払限度額が足りない”問題 が起きやすい。

PL保険が弱いと何が起こる?

大規模な食中毒事故(ノロなど)は
数百万円〜数千万円 の賠償が発生することがあります。

少人数でも

  • 入院1人10万円〜
  • 慰謝料
  • 検査費用
  • 給与補償

など、積み上がると軽く100万〜300万円になります。

●補償のイメージ

規模想定賠償額
5人通院50〜100万円
20人通院200〜400万円
入院者あり300〜800万円
大規模1000万円超
シマナガ

このため、たとえば店舗総合保険に “生産物賠償責任 1,000万円” が設定されていても、「お店の規模/取扱食品/発生可能性」によっては、1,000万円では“足りない”と判断すべき場合があります。
つまり、上限を倍にするなど “拡張”を検討すべき という結論です。

補足・注意点

  • 補償範囲がプランによって異なるので、特に以下をチェック:
    • 賠償金だけでなく、訴訟費用・弁護士費用・調査費用がカバーされるか。
  • 製品自体の損害や回収費用が含まれているか(これは別特約であるケースが多い)
  • 支払限度額・免責金額を確認。1事故あたり・年度通算での限度も注意。
  • 「故意・重大な過失」「法令違反」などがあると補償対象外となるケースも多いです。

④ 店舗設備の破損・水漏れ特約(実務上めちゃ使う)

アカガネ所長

設備トラブルは、飲食店で“もっとも発生件数が多い”事故です。
しかも、火災保険の基本セットのままだと 補償されないことが多い危険な領域 なんです。

よくある設備トラブルと補償の可否

トラブル内容原因保険で守られる?補足
グリストラップ詰まりによる逆流油・残渣の蓄積(対象外多い)経年劣化・管理不足扱い
排水ホース破損 → 店内浸水偶発的な破損(特約でカバー)破損・汚損特約など
上階テナントの水漏れ他室原因借家人賠償と水濡れ補償
換気扇モーター焼損経年劣化寿命扱い
電気フライヤーがショート偶発的事故(特約)“電気的・機械的事故”特約
冷蔵庫が自然に故障経年劣化保険の対象外
シマナガ

飲食店で事故が起こると、
修理費 + 片付け + 売上減 + 他テナントへの賠償
と連鎖的にお金が吹っ飛びます。

でも、火災保険の基本セットは“火災・水害”が中心で、
設備トラブルは守備範囲外。
だから、店舗総合保険や火災保険には “設備特約” を追加しておく必要があります。

特に“漏水事故”は深刻です。
  • ● 水漏れは火災より多い
    • 保険会社の統計でも、飲食店の事故件数は「水濡れ」がトップ
  • ● 被害は“自店だけで終わらない”
    • 階下テナントへの損害(復旧費)
    • ビル共用部の修繕
    • 営業停止による損失
    • 弁償交渉の地獄
      • ―いずれも数十万〜数百万円になりやすい。

法的・約款的な根拠

  • 経年劣化・老朽化は約款で対象外
    • 火災保険および店舗用保険は「偶然かつ突発的な事故のみ補償」という基本原則があります。
      専門サイトでも「火災保険は経年劣化には適用されない」「老朽化・腐食・摩耗は補償対象外」と明記されています。
  • 水漏れも“原因”によって補償されない
    • 法律事務所の解説でも、「管理不足・修繕放置による水漏れは対象外」「自分の設備が原因の水濡れは火災保険の範囲外」と明記されています。
      つまり
      • 上階からの漏水 → 補償されやすい
      • 自店設備の老朽化 → 補償されない
        という構造があるわけです。
  • だから“設備トラブル特化”の特約が用意されている
    • 事業用の保険パンフレットでも、「漏水等危険補償特約」「破損・汚損特約」「電気的・機械的事故特約」
      などが必ず用意されており、設備トラブルは“特約で補完する前提”の設計です。
アカガネ所長

飲食店は油・水・熱・電気を使うので
経年劣化が早い=設備トラブルが多い
だからこそ、
①水漏れ特約破損
②汚損特約
③設備・機械特約
の3つは“実務上ほぼ必須”なんです。

飲食店向け「特約の重要度」まとめ表

特約名優先度理由(根拠つき)
食中毒対応
特約
(見舞金・休業補償)
★★★★★PL保険は被害者への賠償が中心。自店舗の営業停止リスクをカバーするには、別途「営業見舞金」や「休業補償」特約が必要
商品により名称・内容が異なるので注意。
休業補償特約★★★★★火災保険の基本補償には「休業による損失」は含まれないと全社の約款が明記。固定費が即死ライン。
PL保険の上限拡張★★★★☆1000万円はあくまで“最低ライン”。食中毒や後遺障害事故では3000万~1億円超の請求リスクがあるため、高めの限度額設定が望ましい
設備・水漏れ特約★★★★☆経年劣化は約款で「補償外」と明記。
だから突発事故だけ守る特約がないと実費が多発。
盗難特約★★★☆☆現金商売・繁華街は発生率が高い。地域差あり。
実際の保険会社でも“盗難は基本セット外”。
ガラス・破損特約★★★☆☆ガラス・看板・什器破損は基本火災保険では対象外
(破損汚損特約が必要)。実費が意外と高い。

第5章:保険が出ない!?飲食店で最も危険な“経年劣化トラブル”

甲斐承太郎

なんかさ、保険の説明読んでると
「経年劣化は対象外です」とか書いてあるけど…。
排水ホースが破れて水が漏れたり、換気扇が壊れたりって
飲食店だと普通に起きるよね?
これって保険で直せないの?

アカガネ所長

経年劣化・老朽化・自然故障は火災保険・店舗総合保険では原則補償対象外。
あくまで“偶発的な事故”のみが補償対象となります
(例:ホースが突然裂けたなど)。

シマナガ

その理由は、火災保険・店舗総合保険には
「不測(予測困難)かつ突発的な事故のみを補償する」
という基本ルールがあるからです。

東京海上日動・損保ジャパン・三井住友海上などの約款にて明記されており、「自然の消耗や劣化」は免責対象。

経年劣化が補償されない法的・約款的根拠

根拠の種類内容の要約
保険の大原則火災保険・店舗総合保険は「自然災害や不測かつ突発的な事故による損害」を補償。時間をかけて進む劣化・腐食は対象外。
経年劣化の扱い「経年劣化・摩耗・腐食による損害は補償されない」とする解説・約款が多数。
雨漏り・水漏れの解説「経年劣化や修繕を怠った結果の水漏れは対象外」「偶然かつ突発的な外的要因のみ補償」と弁護士サイト等で明記
企業向け約款事業用火災・財産保険では「通常使用で起こる損耗・老朽化による損害は保険金支払い対象外」と約款に規定されている。
※説明はすべて、web上に公開されている実在の約款・専門解説を要約したものです。
アカガネ所長

つまり飲食店でよくある“設備の故障”はこう分類できます。

飲食店で実際に起きる故障の分類

故障内容主な原因保険の扱いの目安
排水ホースが古くて自然に裂けた経年劣化原則:補償対象外(劣化)
グリストラップに油が
溜まりすぎて逆流
清掃・管理不足補償対象外と判断されやすい
(管理義務)
換気扇モーターが寿命で焼損経年劣化原則:補償対象外
新品ホースを引っ掛けて破損・水浸し偶発的な単発事故補償対象になり得る
(破損・水濡れ特約など)
上階テナントからの水漏れ他室の事故水濡れ補償の対象になりやすい
給排水設備の“突発的な破損”からの漏水偶発的な設備事故水濡れ補償・漏水特約の対象
(商品により扱い差あり)

・ゆっくり壊れていくもの → “あなたの責任”扱い(経年劣化)
・突然壊れた・一発事故 → “保険事故”として扱われる可能性

シマナガ

飲食店は油・熱・水・蒸気まみれなので、そもそも劣化スピードが速い業種です。
だからこそ、「どこまで保険で守れて、どこから先は自己責任なのか」を知っておく必要があります。

経年劣化トラブルに備える3つの対策

  • 設備系特約を必ず追加する(必須)
    • 水漏れ特約(漏水・放水等)
    • 破損・汚損特約
    • 電気的・機械的事故特約
    • 設備・什器補償特約 など
      • これらを付けて初めて実務に耐えられる補償範囲になる。
  • 日常点検記録(HACCP)が“保険請求の証拠”になる
    • 清掃記録
    • 設備点検のチェックリスト
    • メンテナンス履歴
      これがあるだけで「管理不足ではない」と判断されやすくなる。
  • 老朽化設備は“保険でどうにかしようとしない”
    • 経年劣化は、保険でどうにもならない。
    • だから「壊れる前提で入れ替える」しかない。
シマナガ

“壊れたら営業が止まる設備”は、
「減価償却+積立」のつもりで早めに更新するほうが、
保険より確実なリスク対策になります。

まとめ

アカガネ所長

飲食店の事故は「ケガ」「食中毒」「火災・水漏れ」「営業停止」と種類が多いですが、仕組み自体はとてもシンプルです。
お客の事故=施設賠償、料理の事故=PL保険、店そのもの=火災保険+休業補償
これらを最初から一つにまとめてくれるのが店舗総合保険で、抜け漏れも管理の面倒もまとめて消してくれます。

シマナガ

火災保険だけでは飲食店は守れません。
経年劣化は原則対象外で、特約を付けないと“出ない事故”が多くあります。
結論として、飲食店は 店舗総合保険を中心に組み、特約で実務の穴を埋める ことが最適解です。

甲斐承太郎

よし、保険の全体像はつかめてきた!
じゃあ次は、どの保険会社を選べばいいのか・比較のポイント を知りたいな。

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