
前の記事で、収支計画や生活費の話は理解できたけど、次はどうすればいいの?そろそろ本格的に“事業計画書”ってやつを作る必要があるのかな?



いい質問ですね。収支計画で“道しるべ”は見えてきました。
ここから先は、“誰かに見せるための”事業計画書。つまり、羅針盤としての計画書を作っていく段階です。
- カフェの事業計画書に必要な全項目とその書き方が具体例つきでわかる。
- 収支見通しや融資審査のポイントを数字で明確に整理できる。
- テンプレートと5ステップの流れで、初心者でも計画書を完成させられる。



事業計画書は、自己確認用の設計図であると同時に、資金調達や関係者との信頼構築のための資料でもある。
カフェ開業に事業計画書は必要?その理由と使い道





そもそも、カフェ開きたいって思ってるだけの段階で、もう“事業計画書”とかって必要なの?



必要かどうかで言えば、“絶対に必要”というわけではありません。
でも、本気で開業して、続けて、成功させたいなら――必ず必要になります。



事業計画書には2つの使い道があります。
自分のための“道しるべ”としてカフェの開業には、物件・内装・仕入・メニュー・人材・集客…と、決めなければならないことが山ほどあります。頭の中にある理想を整理し、「売上はどれくらい必要か」「資金はいくら足りないか」「ターゲットにどうアプローチするか」などを見える化することが重要です。
「将来の売上を予測し、行動の優先順位を決める地図」
それがあなたのための事業計画書です。



カフェの開業には、物件・内装・仕入・メニュー・人材・集客…と、決めなければならないことが山ほどあります。頭の中にある理想を整理し、「売上はどれくらい必要か」「資金はいくら足りないか」「ターゲットにどうアプローチするか」などを見える化することが重要です。
融資や支援を得るための“羅針盤”として



開業時に多くの人が利用する日本政策金融公庫や地銀の創業融資では、事業計画書の提出が必須です。
銀行員や支援機関はこの資料をもとに、「このカフェは成功する可能性があるか?」「返済能力はあるか?」を判断します。



「第三者があなたの想いと計画を理解できるようにする説明書」
それが相手に向けた事業計画書の役割です。



なるほど…たしかに“自分の中だけの夢”のままだと、人に説明もできないもんな。
道しるべにも羅針盤にもなるって言われると、たしかにちゃんと書いておくべきだね。
事業計画書に必ず書くべき項目【創業計画書の基本構成】



事業計画書は、ただの作文ではありません。
金融機関や支援者に“あなたの事業の可能性”を伝えるビジネス文書です。
日本政策金融公庫の「創業計画書」では、主に以下の項目が求められます。
それぞれの項目には、あなたの戦略や想いを数字で裏付ける説得力が求められます。
「なぜカフェを始めたいのか?」
あなた自身の経験や想い、社会への問題意識を言葉にしましょう。
あなた自身がこのビジネスを任せられる人物か?の評価材料です。
飲食経験があれば具体的に。なければ“経営に通じるスキルや取り組み”をアピール。
他店と差別化できるコンセプトや提供価値(ベネフィット)を明確に。
例:
大容量コーヒーでリフレッシュと集中を両立
高級ヘッドフォン貸し出しで「音に包まれた集中空間」
誰を相手に、どこで戦うのか?
市場の需要や競合との差別化、ペルソナの明確化が肝心。
月商や月経費、営業利益の見込みを数字で算出。
「現実的な数字」かつ「改善余地のある設計」に。
物件取得費、内外装費、備品、広告費、運転資金など
→ 総額いくら必要で、自己資金と融資でどう賄うのか?



うわっ、思ったより項目が多い…でも、これを整理することで“本気度”も試されてるって感じなのね
創業の動機|なぜカフェを始めるのか?



事業計画書の最初に問われるのが、「あなたはなぜこの事業をやりたいのか?」という“動機”です。
ここでは、数字や実績よりも「あなたの意思や背景」が問われます。
- スターバックスは「人々の心を豊かで活力あるものにする場所を提供する」というミッションから始まりました。
- コメダ珈琲は「誰もがくつろげる“リビングルームのような喫茶店”」を作りたいという想いが原点です。
- 星乃珈琲は“本格珈琲×レトロ空間”を武器に、他店との差別化を目指しました。
承太郎の場合
第二のワークプレイスになるカフェをつくりたい。会社でも自宅でもない、“集中できる第三の場所”がなかったから
音が気にならない高級ヘッドホン、仕切られた空間、個別電源とWi-Fi、そして仕事に集中するための大容量コーヒー。そんな場所があれば、自分自身も“もっとがんばれた”と思った経験から、同じように働く人の力になりたいと考えました。
経営者の略歴・スキル|実務経験がなくても「学びの姿勢」でカバーできる



事業計画書において、経営者のスキルや経験は「この人にお金を貸して大丈夫か?」という判断材料になります。
でも、カフェ経営の実務経験がなくても諦める必要はありません。
大切なのは「経験を補うためにどんな準備をしているか?」を伝えることです。
実務経験ありの人:
「○○カフェでホール業務・発注・シフト管理を2年経験」など、業界経験をそのままアピール。
未経験の人:
「土日の間借りカフェで副業として接客・提供を経験中」
「キッチンカー出店で仕入れ・調理・価格設定・接客を一通り学んだ」
「SNS集客や会計ソフトの操作など、経営視点のスキルを自己学習中」
承太郎の場合(未経験)
カフェ経営は未経験ですが、副業で週末のみ間借りレストランに立ち、注文受付・提供・片付け・在庫管理などの業務を習得中です。
将来的にはキッチンカーでのプレ出店も検討し、仕入・原価管理・営業許可などの実務も体験しながら、独立後を見据えた準備を行っています。
商品・サービスと強み|メニュー構成と独自性で差別化する



事業計画書では、「どんな商品・サービスを提供するのか」と、それによって「どんな強み・独自性があるのか」を明確に記載する必要があります。
提供する商品の概要(例:コーヒー・ホットサンドなど)
メニューのこだわり(例:素材、容量、作り方)
競合との違い(例:提供方法、サービス、体験価値)
承太郎の計画を反映した例
当店では、大容量780mlの“ビッグコーヒー”(1,000円)と、手が汚れないホットサンド(500円)を主力商品とします。
提供はすべてキャッシュレス決済限定とし、店内は個別に仕切られたカウンター席で、高級ヘッドホンの無料レンタルとWi-Fi・電源完備。
働くビジネスマンが「第二のワークプレイス」として仕事に集中できる空間を目指します。
市場分析・競合・ターゲット|カフェを選ぶ理由と選ばれる理由



事業計画書では、「なぜこの立地・この商品で勝負するのか?」という根拠が必要です。特に融資審査では、「その市場で勝ち目があるのか?」をチェックされます。
- 出店エリアの特徴(人口動態・駅からの距離・オフィス数など)
- 競合店の有無と業態の違い
- ターゲット層のニーズと行動特性
- 自店が選ばれる理由(強みとの接続)
出店候補地は、札幌市中心部のオフィス街エリア。
近隣には中小企業やコールセンターが多く、6:00〜18:00までの早朝営業に対応した飲食店は少ないのが現状です。
本カフェは、「第二のワークプレイス」をコンセプトに、残業・在宅勤務・昼休憩のすきま時間に集中したいビジネスパーソンをターゲットとします。
類似店舗はコメダ珈琲が郊外に一店舗、スタバは繁華街寄りにありますが、個別ブース型の集中スペースを提供している店は皆無です。
ビッグサイズのコーヒー、静かな環境、高級ヘッドホンというオンリーワン体験によって、価格競争に巻き込まれず安定収益が見込めます。
収支見通し(売上・経費・利益)|儲かるかどうかの試算がすべての出発点



事業計画書の中でもっとも重要といえるのが、この「収支見通し」です。ここがあいまいだと、融資もパート募集もすべてが不安定になります。
- 月商(売上)の根拠と計算式
- 月間コストの内訳(変動費・固定費)
- 営業利益の見込みと生活費の確保
- 5年後先までの見通しとキャッシュフロー計算書
承太郎の計画を反映した例
客単価は1,500円(コーヒー1,000円+ホットサンド500円)で設定。
1日あたり:「18席 × 1.2回転 × 24日 ≒ 約30人」の来店を目指すと、
1,500円 × 30人 × 24日 = 月商90.3万円。
FL(原価・人件費)を合わせて25%、その他販管費28%、家賃19%、営業利益27%と見積もれば…
- 月商:90万円
- 食材原価(F):22.6万円(25%)
- 人件費(L):0万円(0%)
- その他費用(販管費・水道光熱費など):25.2万円(28%)
- 家賃:17.3万円(19%)
- 営業利益:約24.2万円(27%)



このシミュレーションでは、営業利益=24.2万円。
個人の生活費をここから賄うには少し心もとない金額です。
さらに開業費の返済(月額6.6万円)も始まりますのでご注意ください。



ちょっとまって!
毎月の利益が24.2万円 - 借入返済6.6万円 → 実質手残り17.6万円!?
所長の収支計画ぜんぜんダメじゃん!



焦るのはまだ早いです。
“損益計算書だけでは見えないお金” があるんです。
その秘密は、キャッシュフロー計算書(資金繰り表)に隠れています。
キャッシュフロー計算書で見える「本当の手残り」


なぜ損益と手元資金は違うのか?



それは「減価償却費」の存在が大きいからです。
開業時に購入した厨房機器や内装など、高額な設備投資を“何年かに分けて費用計上”していく仕組みです。
つまり、実際のお金はすでに支払い済みなのに、毎年すこしずつ「費用」として帳簿に現れるのです。
その分、キャッシュ(現金)は実際には出ていかないので、「帳簿上の利益」と「手元に残るお金」には差が出るのです。
手元に残る現金
= 営業利益 + 減価償却費 − 借入返済額
= 24.2万円 + 4.4万円 − 6.6万円
= 約22万円



えっ!?じゃあ、手元には22.9万円も残ってるってこと!?
帳簿だけ見てたら「破綻寸前」って思ってたのに!



そうです。キャッシュフローを把握していない経営者は、損益計算書だけで誤解してしまうんですよ。
金融機関もこの部分をしっかり見てきます。
だから、事業計画書には損益計算書+キャッシュフローの両方を作るのが鉄則なんです。
- 銀行が一番知りたいのは「本当に返せるのか?」という一点。
- その判断材料になるのが「月々のキャッシュがどれだけ残るか」=キャッシュフロー
- 損益がトントンでも、キャッシュが十分残っていればOKというケースもあるのです。
- 損益計算書=あくまで「帳簿上の利益」
- キャッシュフロー計算書=「本当に使える現金」
- 借入返済・生活費・次の投資を支えるには、キャッシュの動きこそ重要
キャッシュフローにまつわる怖い話



…今回は「帳簿では赤字でも、実際はお金が残っていた」話でしたが……
逆だったら、どうなっていたでしょうか……。
──想像してみてください……。
帳簿には、こう書かれていました。
「今月は営業利益20万円。順調です」
でも、そのお店の通帳には……残高3,000円。仕入れの支払いができない。家賃も払えない。



なぜ……?
それは、支払いが未来にあることを忘れていたからです。
- 開業初期に使った借入金の返済が始まったばかり……
- クレジットカードで仕入れた食材費が、翌月どっさり請求……
- 売上金はすべて「今月の帳簿」に乗ってるのに、まだ入金されていない……



……その後どうなったかは、言わなくても……わかりますね。



……というわけで、キャッシュフローの“マイナス→プラス”を見落とすのも危険ですが、
“プラス→マイナス”も、さらに危険です。帳簿上の黒字に惑わされないこと。
金融機関は、このような危険性を防ぐために「キャッシュフロー計算書」を見て、本当に返済可能か・経営を維持できるかを確認するのです。
創業融資で見られるポイント|日本政策金融公庫の視点とは?



キャッシュフローのからくりもわかったし、収支計画も立てた。
じゃあ、あとはお金を借りればいいんだよね?
でも…そもそも融資って、どうやって申し込むの?
なにを見られて、どう審査されるの?



うむ。ここからが“羅針盤”としての事業計画書の出番です。
創業融資、とくに「日本政策金融公庫」を利用する際は、
書類に何を書くかだけじゃなく、“どの視点で見られているか”を知ることが大事なんですよ。
融資審査でチェックされる5つのポイント
審査視点 | 見られる要素 | 承太郎の「やすまーる」の場合 |
---|---|---|
① 自己資金の割合 | 融資希望額に対しての自己資金の比率 | 自己資金400万円/必要資金1100万円 →36%と良好 |
② 経営者の経験 | 飲食・接客経験/修業期間の有無 | 間借り営業で修業中、SNS発信で実績づくり |
③ 計画の現実性 | 売上・利益・返済が無理のない設計か | 客単価・席数・回転数から逆算しており、整合性あり |
④ 借入の妥当性 | なぜその金額が必要か/何に使うか | 資金使途の内訳が明確(厨房、看板、家賃など) |
⑤ リスク対策 | 失敗したときのリカバリープラン | 営業時間・席数を柔軟に調整できる設計、返済原資の確保も可 |
- 創業計画書(日本政策金融公庫フォーマット)
- 設備資金・運転資金の内訳表
- 見積書(厨房機器・内装工事)
- 家賃契約書・テナント情報
- 身分証明書・通帳コピー・納税証明書など



「数字がきれいかどうか」よりも、その数字に裏付けがあるかが最重要です。
根拠のある計画書をもとに、「なぜこの店は成功するのか?」を伝えましょう。



なお、金融機関が最も重視するのは「返済できる見込みがあるか」です。
その判断は、事業計画書の「収支見通し」と「キャッシュフロー」でなされます。
事業計画書を作る5ステップの手順





なんとなく内容はわかってきたけど、実際に“書く”ってなると難しそう…。
順番とか、見本とか、ないの?



順番どおりに進めれば誰でも作れます。
ここでは「やすまーる」の開業計画をベースに、テンプレート付きの5ステップで解説していきましょう。
- 創業の動機(なぜこの事業を始めるのか?)
- コンセプト(ターゲット/店舗スタイル/サービス)
- 開業場所と業態(オフィス街・カフェ・テイクアウト有無など)
- 自己紹介(過去の仕事・スキル・学び)
- 客単価 × 客数 × 営業日数 = 月商
- 原価(F)・人件費(L)・販管費などを%で予測
- 損益分岐点、キャッシュフローも簡易でOK
📝 テンプレ例:
月商 | 903,000円 | 客単価1,500円×30人×24日 |
---|---|---|
原材料費(F) | 226,000円 | 月商の25% |
家賃 | 173,000円 | 固定 |
水道光熱・通信費等 | 253,000円 | 月商の28% |
営業利益 | 約242,000円 | ただし借入返済が月66,000円 |
- 店舗取得・内装・什器の見積もり
- 運転資金(仕入・家賃・光熱費)の3〜4ヶ月分
- 自己資金と借入のバランス
- 商圏(立地と人通り・オフィス数)
- 競合店の価格帯・席数・営業時間・集客手段
- ベンチマーク店との違いを明確に
日本政策金融公庫の【創業計画書フォーマット】に記入。



事業計画書とは、夢を現実に落とし込む設計図です。
うまく書こうとせず、正確に“自分の計画を言語化”することに集中しましょう。



完成すれば、それは「あなたの未来を説得するプレゼン資料」です。
融資担当にも、パート希望者にも、そしてあなた自身にも――。
まとめ



さて、これまでカフェ開業に必要な事業計画書の全体像を見てきましたね。
これらを「頭の中で何となく考える」ではなく、「紙に書き出して他人に伝えられる形」にしたのが事業計画書です。
つまり、カフェ開業の成功率を高める“準備力”の証明書なんです。
- 売上や利益の見通しを立てる【収支予測】
- それを裏付ける【商品設計・ターゲット・市場分析】
- 融資や支援を受けるための【資金計画】
- 書類を実際に形にする【創業計画書のステップ】



事業計画書は、あなたのカフェが「なぜ・どうやって・どのくらい稼げるのか」を、誰が見ても理解できるようにするための文書です。
書くこと自体が「自己対話」であり、失敗の芽を未然に摘み取る作業です。
カフェ経営の現実は、甘くありません。
それでも事業計画書があれば、迷わず進むための道しるべになります。



よし!お金の計算も終わって、計画も形になってきた…!
あとはお店に必須の光回線やらPOSレジやらキャッシュレス決済端末やら用意するものがいっぱいあるぞ!!

