脱サラ飲食店の失敗と末路|すべてを失ったあとに残るもの

甲斐承太郎

正直に言うとさ……
「飲食店を始めて失敗したら人生終わり」って、
どこかで本気で思ってる。
借金、廃業、再就職できない未来……
考え出すと、怖くて夜に眠れなくなるんだ。

アカガネ所長

その感覚、まったくおかしくありません。
むしろ、そう思える人ほど真剣です。
ただ一つ、最初に整理しておきたいことがあります。
飲食店開業における失敗と、人生における失敗は、同じではありません。

この記事でわかること
  • どんな状態を「飲食店開業の失敗」と呼ぶのか
  • どこで「撤退」と判断すべきか
  • 失敗を人生に持ち込まないための考え方
シマナガ

飲食店開業における失敗とは、店を閉めること(廃業)ではありません。
本当の失敗は、
・状況を把握できなくなる
・判断を先送りし続ける
・損失が広がっているのに止まれない
この状態に入ることです。

飲食店開業の失敗=人生の失敗ではない。
判断できる人は、失敗しない。

この記事を書いた人

こやけ企画代表:たがわひでゆき

たがわ ひでゆき

所有資格:行政書士・簿記2級
趣味:プロレス

1983年生まれ、旭川出身。
飲食店開業支援を手掛ける『こやけ企画』の代表。
長年運送業に従事しながら、キャリアチェンジを目指して3度目の挑戦で行政書士試験に合格。

脱サラを目指す方々に向けて、楽しくわかりやすく飲食店開業ノウハウを発信するブログ『脱サラ物語』を運営中。
将来、行政書士として独立開業することを目標に、日々準備を進めています。

私生活はサラリーマンとご当地レスラー「イソロク」として2足のわらじで活動中

目次

第1章|多くの人が勘違いしている「飲食店の失敗」

甲斐承太郎

「飲食店で失敗した」って言葉、売上が出なかったとか、店を閉めたとか、そういう意味で使われてる気がするんだけど……。

アカガネ所長

ええ。そこが最初の勘違いです。
飲食店の“失敗”は、結果ではなく状態で考える必要があります。
まず整理しましょう。
一般に「失敗」と言われがちなものは、主にこの3つです。

飲食店開業でよく言われる「失敗」3パターン

よくある認識実際の評価
1.売上が出なかった一時的な結果にすぎない
2.赤字が続いた調整・改善の余地がある
3.廃業した経営判断の一つ
シマナガ

結論を言います。
この3つは、それ自体では失敗ではありません。

甲斐承太郎

え、でも全部ヤバそうだけど……。

アカガネ所長

たしかに、放置すれば危険です。
ただし問題なのは“起きたこと”ではなく、
それに対して判断できているかどうかなんです。

本当の「失敗」とは何か

シマナガ

飲食店開業における本当の失敗は、
次の状態に入ることです。
これは結果ではありません。
判断不能な状態です。

本当の「失敗」とは
  • 売上や資金の状況が把握できていない
  • 赤字の理由を説明できない
  • 「もう少し様子を見る」を繰り返している
  • やめる判断が、怖さや意地だけで先延ばしになる
アカガネ所長

多くの人が、ここに気づかないまま進んでしまいます。
「まだ頑張れる」「そのうち良くなる」
この言葉自体が悪いわけではありません。
ただし、
根拠のない我慢に変わった瞬間、
経営は静かに壊れ始めます。

なぜ判断が遅れるのか

シマナガ

判断が遅れる理由は、ほぼ共通しています。
その結果、数字や事実ではなく、感情が判断を支配します。

判断の遅れの原因
  • 店を閉める=失敗だと思い込んでいる
  • 周囲にどう見られるかが怖い
  • 自分の選択を否定したくない
甲斐承太郎

たしかに……「廃業=負け」って思ってると、判断そのものができなくなるな。

アカガネ所長

その通りです。
だから我々は廃業を「終わり」ではなく経営判断の一つとして扱っています。

シマナガ

整理します。
判断できない状態に入ること
これが、飲食店開業における失敗です。

よくある「失敗」の誤解マップ
  • 売上が落ちた=失敗?
  • 赤字が出た=失敗?
  • 廃業した=失敗?

すべて「結果」であって失敗そのものではない

第2章|飲食店が「失敗状態」に入る典型パターン

甲斐承太郎

第1章で「判断できなくなるのが失敗」って話は分かったけど、
実際、どんな流れでそうなっちゃうんだろう?

アカガネ所長

いい質問です。
失敗状態に入る店には、かなりはっきりした共通パターンがあります。
順番に整理しましょう。

飲食店が失敗状態に入る3つの構造

構造起きていること危険な兆候
資金が見えなくなる現金残高・支払い予定を把握していない「今月はいけそう」という感覚判断
数字を見なくなる原価率・固定費を説明できない売上だけで一喜一憂する
判断を感情に任せるやめ時を決めていない「ここでやめたら負け」という思考
シマナガ

この3つが同時に進行すると、
経営は静かに制御不能になります。

構造|資金が見えなくなる

アカガネ所長

最初に起きるのは、ほぼ例外なくこれです。
この状態では、黒字でも突然止まります。

口座残高は見ている
でも「来月・再来月の支払い」が見えていない

甲斐承太郎

売上が出てれば大丈夫、じゃないんだね。

アカガネ所長

ええ。資金が見えないと、判断は常に遅れます。

構造|数字を見なくなる

シマナガ

次に起きるのが、数字を“見るのをやめる”ことです。
これは怠慢ではありません。
余裕がなくなったサインです。

数字を見なくなると…
  • 原価率が説明できない
  • 家賃・人件費の割合を把握していない
  • 「忙しいから後で」と放置する
甲斐承太郎

忙しいと、考えるの後回しにしがちだよな……。

シマナガ

その瞬間から、経営は感覚勝負になります。
感覚で続けられる経営は、長くは持ちません。

構造|判断を感情に任せる

アカガネ所長

最後に残るのが、感情です。
これ自体は、人間として自然です。
問題は、判断基準が感情だけになること

  • 「ここまでやったのに」
  • 「もう少し頑張れば」
  • 「周りにどう思われるか」
甲斐承太郎

やめる理由より、続ける理由を探しちゃう感じか。

アカガネ所長

そうです。
続けるか、やめるか。
どちらも経営判断なのに、片方だけが「敗北」に見えてしまう。

第3章|「失敗」と判断すべきラインはどこか

甲斐承太郎

正直さ……
どこまで行ったら「もうダメだ」って判断すればいいのか、
それがいちばん分からない。

アカガネ所長

そこが分からないまま進むと、判断は必ず遅れます。
だから経営では、感情とは別に“線”を引くんです。

撤退ラインは「負け」を決めるものではない

シマナガ

最初に言います。
撤退ラインは、
「やめる理由」を探すためのものではありません。
壊さないための保険です。

甲斐承太郎

保険……?

シマナガ

はい。
事故が起きたあとに考えるのではなく、
起きる前から用意しておくものです。

飲食店開業における撤退ラインは3つだけ見ればいい

アカガネ所長

撤退ラインは、
細かく作る必要はありません。
最低限、次の3つだけで十分です。

①資金のライン
  • 手元資金が
    あと何か月持つか説明できるか
  • 3か月を切った時点で、
    次の選択肢を具体的に検討しているか
シマナガ

「まだ回っている」では不十分です。
数字で言えない時点で、判断は遅れています。

②数字・売上のライン
  • 売上が下がった理由を説明できるか
  • 客数・客単価・原価率を分解して見ているか
  • 改善策と期限をセットで考えているか
アカガネ所長

売上が下がること自体は、珍しくありません。
問題は、理由と期限がないまま続けることです。

③生活・精神のライン
  • 睡眠が取れているか
  • 判断を一人で抱え込んでいないか
  • 「怖さ」だけで続けていないか
シマナガ

ここは軽視されがちですが、非常に重要です。
これは甘えではありません。
経営者の状態は、経営の一部です。

甲斐承太郎

数字だけじゃなくて、自分の状態も判断材料に入れていいんだ。

アカガネ所長

当然です。
壊れた経営者が、
冷静な判断を下せるはずがありません。

撤退ラインを決めている人は、失敗しにくい

シマナガ

整理します。
撤退ラインは、経営を守る技術です。

撤退ラインがある

判断が早くなる→ 損失が限定される

撤退ラインがない

感情で粘る→ 損失が拡大する

甲斐承太郎

やめるって決めるの、怖いことだと思ってたけど……

アカガネ所長

逆です。
やめる基準を決めていない方が、ずっと怖い。

シマナガ

撤退は、逃げではありません。
判断です。
判断できる人は、飲食店開業で「失敗」しません。

第4章|飲食店開業に失敗したとき、まずやるべきこと

甲斐承太郎

もし……
「これはもう厳しいかも」って思ったら、
最初に何をすればいいんだろう。

アカガネ所長

まず安心してください。
何かを急いで決断する必要はありません。
この段階で一番やってはいけないのは、「一気に全部解決しようとすること」です。

最初にやるべきことは「動く」ことではない

シマナガ

結論から言います。
最初にやるべきことは、現状を並べることです。
判断は、そのあとです。

甲斐承太郎

並べる……?

シマナガ

はい。
頭の中にある不安を、一度すべて外に出す作業です。
最低限、次の3つだけを書き出してください。
完璧である必要はありません。
7割で十分です。

①現状の棚卸しをする
  • 手元資金はいくらあるか
  • 毎月、必ず出ていくお金はいくらか
  • 今後、支払い予定の契約は何があるか
甲斐承太郎

数字を全部そろえないとダメかと思ってた。

シマナガ

それがパニックの原因です。
まずは「全体像」を見ること。
精度は、あとから上げればいい。

②契約関係を一気に整理しようとしない
  • どんな契約があるか
  • いつまでに動けばいいか
アカガネ所長

この段階で、解約・返却・届出を一気にやろうとする人が多い。
それは逆効果です。
把握するだけで止めてください。

甲斐承太郎

「今すぐ何かしないと」って焦るよな……。

アカガネ所長

ええ。
でも焦りは、判断を雑にします。

③次の選択肢を「消さない」行動を取る
  • 勢いで全てを処分しない
  • 感情で関係を断たない
  • 一人で抱え込まない
シマナガ

ここが一番重要です。
今やるべきことは、未来の選択肢を残すこと

甲斐承太郎

何か決める前に、決めない勇気も必要なんだな。

アカガネ所長

その通りです。
経営が苦しい時ほど、
「何をしないか」が重要になります。

この章のまとめ
  • すぐに決断しない
  • まず現状を並べる
  • 契約は把握だけ
  • 選択肢を消さない
シマナガ

これは撤退準備ではありません。
冷静さを取り戻すための作業です。

【チェックリスト】この段階で「やらないこと」
  • 値引きで無理に売上を作らない
  • SNS投稿で気持ちを誤魔化さない
  • 感情で設備や内装を処分しない
  • 取引先と勢いで関係を切らない
  • 一人で全部決めようとしない

第5章|飲食店開業の失敗は「次に進むための経験」になる

甲斐承太郎

正直……
一度失敗したら、もう次はない気がしてた。

アカガネ所長

多くの人が、そう感じます。
でも現実は少し違います。

一度失敗した人の方が、次は失敗しにくい

シマナガ

結論を言います。
飲食店開業で一度失敗した人は、
次の挑戦で同じ失敗をしにくい。

理由は、才能や根性ではありません。
構造を知っているからです。

甲斐承太郎

構造?

シマナガ

はい。
成功している人より、一度失敗した人の方が「どこで壊れるか」を知っています。

失敗経験で残る3つの力

アカガネ所長

失敗を経験すると、
次の3つが確実に残ります。

①数字への感覚
  • 売上だけでは安心できない
  • 現金残高と固定費を見る癖がつく
  • 「忙しい=儲かっている」とは限らないと知る
シマナガ

これは、
机上の勉強では身につきません。

②固定費への警戒心
  • 小さく始める
  • 縛りの強い契約を避ける
  • 逃げ道を残す
アカガネ所長

一度痛い目を見た人は、家賃・人件費・契約に慎重になります。
これは、経営者としての成熟です。

③撤退ラインを知っている
  • どこで止めるか
  • どこまで粘らないか

を、感情ではなく判断で決められる。

シマナガ

最大の違いは、ここです。
撤退ラインを知っている人は、失敗を拡大させません。

甲斐承太郎

一度失敗した人の方が、
冷静ってことか。

アカガネ所長

ええ。
派手さはなくなりますが、生存率は上がります。
失敗は「減点」ではなく「条件」

  • 失敗経験がある
    → 判断が早い
    → 損失が小さい
    → 次の選択肢が残る
シマナガ

これは減点ではありません。
条件が一つ増えただけです。

甲斐承太郎

そう考えると……失敗そのものより、
失敗をどう扱うか、なんだな。

アカガネ所長

その通りです。
経営に必要なのは、成功談よりも判断経験です。
飲食店開業の失敗は、終わりではありません。
次に進むための材料です。

第6章|「ただ店を閉める」だけでは終わらない

甲斐承太郎

……なんとなく分かってきた。
撤退ラインを決めて、ダメなら潔くやめる。
で、やめる時は大家さんに「来月出ます」って言って、鍵を返せばいいんだよね?
あとは廃業届を役所に出して終わり、みたいな。

シマナガ

……その認識は危険です。
その流れで動くと、店を閉めた“あと”に大きな請求が来ます

アカガネ所長

脅しではありません。
飲食店は「開ける時」よりも、
「閉める時」の方が知識と段取りを要求される場面が多いんです。

落とし穴①|「解約予告期間」という時限爆弾

シマナガ

まず、賃貸借契約書を確認してください。
そこに書かれている「解約予告期間」は何ヶ月ですか。
多くの場合、3ヶ月前〜6ヶ月前と定められています。

甲斐承太郎

……6ヶ月前って書いてある。

シマナガ

つまり、「今日で店を閉める」と決めても、
そこから半年分の家賃は支払う義務があるということです。
売上がゼロでも、営業していなくても、関係ありません。

アカガネ所長

家賃20万円なら、半年で120万円。
この金額を確保できていない状態で撤退判断をすると、
その時点で資金が詰みます。

シマナガ

資金が尽きてから撤退を決めると、この家賃を払えず、夜逃げ同然になるケースもあります。
だからこそ、「まだ余力があるうちに判断する」必要があるんです。

落とし穴②|「原状回復」という高額請求

シマナガ

次に確認すべきは「原状回復義務」です。
入居後に内装工事をしている場合、退去時は原則としてスケルトン(コンクリートむき出し)に戻すことが求められます。

甲斐承太郎

カウンターも厨房も、全部壊すってこと?

シマナガ

そうです。
そしてこの解体工事費が高額になります。
目安としては坪あたり5万〜10万円
15坪の店なら、100万円を超えることも珍しくありません。

アカガネ所長

・解約予告期間の家賃
・原状回復工事費
この2つだけで、
閉店コストが200万〜300万円になるケースもあります。

落とし穴③|リース品・借入金の「法的責任」

シマナガ

最後に、最も見落とされやすい点です。
厨房機器やレジをリース契約で使っていませんか。

甲斐承太郎

ある。
月々払ってる冷蔵庫があるけど……
閉めるなら売って現金にした方がいいのかな。

シマナガ

それはできません。
リース品の所有権は、使用者ではなくリース会社にあります。
勝手に売却・処分すると、
契約違反や法的問題に発展する可能性があります。
必ず、確認しましょう。

リース品の取り扱い
  • リース会社へ連絡
  • 契約内容に従った解約・返却
    が必要です。
アカガネ所長

借入金も同じです。
金融機関に連絡せずに事業を止めると、一括返済を求められることがあります。

シマナガ

しかし、事前に状況を説明し、返済計画を整理した上で相談すれば、条件変更が検討されるケースもあります。
・「黙ってやめる」と
・「状況を整理して話す」では、
結果が大きく変わります。

この章のまとめ|廃業で本当に注意すべきこと

アカガネ所長

飲食店の廃業には、
表に見えにくいコストと責任があります。

廃業で本当に注意するべきこと
  • 解約予告期間分の家賃
  • 原状回復(解体)工事費
  • リース品の返却義務
  • 借入金の返済・調整
甲斐承太郎

……正直、甘く見てた。
気持ちが折れてる時に、これを全部一人でやるのはきついな。

アカガネ所長

だからこそ、廃業は「感情が限界になる前」に
準備として考えておく必要があります。

シマナガ

廃業は失敗ではありません。
ただし、手順を間違えると傷が深くなる
それだけは、覚えておいてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次