
なんか、前の記事(準備と計画編)で
「カフェ経営の成功も失敗も、事業計画しだい!」ってのはわかったよ。
で、その計画書ってのはどうやって作ればいいの?



いい質問です。
事業計画書は“誰かに見せる”ためだけのものではありません。
あなた自身の理想を言語化し、数字に落とし込むことで、
「ブレずに進む」ための地図となるのです。
さらに、開業資金を調達するための必要なツールになります。
- カフェの事業計画は「売上・経費・利益」を数字で逆算して立てることができる
- コンセプトやメニューが物件や収支に直結することがわかる
- 損益分岐点や運転資金の考え方を知り、開業後の資金ショートを防げる



事業計画書とは、自分用の道しるべであり、相手への羅針盤である。
STEP0:事業計画ってなぜ必要?


──“あなたの理想”を数字に変える最初の一歩



夢や情熱があるのは素晴らしいことです。
でも、カフェ経営は「好き」だけでは続きません。
まず必要なのは、“あなたの理想”を他人に伝わるカタチにすること。
それが「コンセプト設計」です。
コンセプト設計がすべての起点
例 | どんなお店? | ターゲット | 提供価値(ベネフィット) |
---|---|---|---|
早い・安い・旨い | 混雑する駅前のセルフカフェ | 通勤サラリーマン | 時間短縮とコスパ |
写真映えスイーツとドリンク | SNSで拡散されるカフェ | 若年層の女性 | 体験と話題性 |
落ち着いた空間で長居できる店 | コメダ的くつろぎカフェ | シニア層・主婦 | 居心地の良さ |



僕が目指しているカフェはミュージシャンの使用した衣装やギターを飾った店内で、ノンストップで流れるミュージックを聴きながら、手作りにこだわったアメリカ料理と革新的なカクテルが楽しめる …



いいですね!それが立派な“コンセプト”です。
この段階で、あなたが「誰に」「どんな時間を提供するのか」が明確になります。
ここから、すべての設計が逆算できるようになるんです。



ハードロックカフェ…
なぜ事業計画が必要なのか?
理由 | 目的 |
---|---|
融資を受けるため | 日本政策金融公庫や銀行に提出が必要 |
家族・パートナーを納得させるため | 数字で説明できると安心感が増す |
開業後に道に迷わないため | 「迷ったらここに立ち返る」設計図になる |
スターバックス | 3rdプレイス(家庭・職場以外の居場所)を創出。店舗ごとに戦略を設計。 |
コメダ珈琲 | 「くつろぐ、いちばんいいところ」が理念。郊外×長居×満腹を重視。 |
星乃珈琲店 | スフレパンケーキやレトロ空間で「非日常」を演出。 |
STEP1:カフェの売上予測を立てる


──「目標売上」はコンセプト次第で変わる!



事業計画の第一歩は「売上予測」です。
カフェ経営で言う売上は、以下の式で構成されます。



これをもとに、あなたの“理想のカフェ”を数字に変換してみましょう。
コンセプト別 売上予測の目安
店舗A(都心駅前の高回転カフェ) | 店舗B(郊外のくつろぎカフェ) |
---|---|
客単価:800円 | 客単価:1,200円 |
席数:15席 | 席数:10席 |
回転率:4回 | 回転率:1.5回 |
営業日数:25日/月 | 営業日数:25日/月 |
月商:120万円 | 月商:45万円 |



へえ〜、同じカフェでも、
コンセプトやターゲットによって、売上の構造がぜんっぜん違うんだね!



その通りです。
売上予測は「店の方向性」を映す鏡です。
あなたのカフェは、どのスタイルでいきますか?
もうひとつの事例
A店(スタンド型セルフカフェ) | B店(コメダ的フルサービス) |
---|---|
提供時間:1〜2分 | 提供時間:10〜15分 |
滞在時間:15〜20分 | 滞在時間:1〜2時間 |
メニュー数:5〜6品 | メニュー数:30品以上 |
利益率:高め(回転重視) | 利益率:低め(単価・満足重視) |
客単価はどうやって決まるの?



でもさ…
「客単価が1,000円」って言うけど、それってお客さんが決めるものでしょ?
なんで開業前にわかるの?



いい質問です。
客単価は、あなたのメニュー構成と価格設定次第で決まるんです。
たとえば、以下のようなメニュー開発の違いで、客単価はまったく変わってきます。
タイプ | 主な提供品 | メニュー例 | 想定客単価 |
---|---|---|---|
ドリンク特化型 | コーヒー、紅茶など | ブレンド¥400、カフェラテ¥500 | 500円前後 |
軽食+ドリンク型 | トーストやサンド | モーニング¥600、セット¥800 | 700〜900円 |
ランチ・スイーツ型 | パスタ、スイーツなど | ランチ¥1,000、ケーキセット¥1,200 | 1,000〜1,500円 |
滞在型カフェ | ソファ席・電源・Wi-Fi | 長居前提のセットメニュー | 1,500円以上 |



なるほど!
こっちの出すメニューで“どれくらい使ってもらうか”が決まるんだ!



その通りです。
「何を」「いくらで」「どういう組み合わせで」提供するかを設計することで、
あなたのお店の“平均的な1人あたり売上=客単価”を決めることができるんです。



客単価とは、お客さんの意思じゃなく、こちらでコントロールするものです。
コンセプトに沿った最適なメニュー開発に努めましょう。
STEP2:物件から逆算する、経費と利益の仕組み
──「売上」と「経費」の起点を決める



じゃあさ、カフェってまず何から始めればいいの?
やっぱり、場所?物件?それともメニュー?



実は、メニュー開発が最初のスタートラインなんです。
なぜなら、どんな料理・ドリンクを提供したいかで、必要なキッチン設備や立地が変わるからです。
メニューが決まると“物件の条件”が見えてくる!
メニュー例 | 必要な設備 | 相性の良い立地 |
---|---|---|
サードウェーブ系ドリップコーヒー | ドリップ台・グラインダー | オフィス街・感度の高い若者エリア |
トースト&モーニングセット | トースター・パン保温棚 | 住宅地・郊外駅前 |
自家製スイーツ&パフェ | 製菓調理場・冷蔵庫・盛り付け台 | インスタ映え重視の若者街 |
ランチパスタ・カレー | IHコンロ・シンク・排気 | 重飲食OKな物件・商業施設周辺 |



なるほど〜
「こんなカフェをやりたい!」が決まると、
それを実現するための場所や条件も自動的に決まってくるってことか!



そうです。そして、その「メニューに合った物件」の目星がついたら、
今度はそこをベンチマークにして、お金の話に入っていくんですよ。
物件をベンチマークに“経費”が見えてくる
項目 | 影響する要素 |
---|---|
家賃(R) | 売上に対する固定費の基準に |
広さ | 席数の上限・オペレーション効率・光熱費の目安 |
立地 | 商圏=ターゲット層とのマッチ度・広告効率 |
設備条件 | キッチン許可の有無・内装コストに直結 |
あなたが“生活できる”最低売上=生活安全分岐点



さっきの記事でもやったけど、お店をやるにしても最低限の生活ができるくらいの生活費は稼ぎたいな。
まあ、毎月30万円くらいは…こっから国民健康保険料とか引かれちゃんだし…



まさにその発想が大切です!
赤字じゃなくても、生活費が出せなければ“続かない店”になります。
そこで出てくるのが――
たとえばこう考えてみましょう
家賃 | 90,000円 |
リース・通信費など | 40,000円 |
広告費・利息など | 30,000円 |
合計 | 160,000円 |
【必要売上】=(生活費+固定費)÷(1-変動費率)
= (300,000 + 160,000) ÷ (1 – 0.4)
= 460,000 ÷ 0.6
= 約767,000円



つまり、毎月30万円を収入として事業を継続するには月76万円(1日=30,400円)の売上を目標にするとよいでしょう。



さらにSTEP1の客単価を利用すると30,400(1日の目標売上) ÷ 1,000(客単価) = 30.4人(一日の目標来店数)という計算式をを作れます。



なるほど!いろんな数字を組み合わせて最適な収支計画を作っていくのが大切な準備なんだね!
STEP4:利益が出ても潰れる?キャッシュフローと運転資金の重要性





でもさ、月に80万円くらい売上があって、利益も3万円くらい出てるのに、なんで潰れたりするの?
それって黒字なのに不思議じゃん?



その理由はズバリ――
現金(キャッシュ)が足りないからです。
帳簿では黒字でも、手元にお金がなければ支払いができず、倒産します。
利益 | 売上から経費を引いた「帳簿上のもうけ」 |
キャッシュ | 実際に銀行口座にある「現金の残高」 |
初月の利益:3万円
→ でも、毎月の返済が7万円だったら?
→ 口座から現金は7万円出ていきます
→ 残る現金は マイナス4万円。
これを続けるとあっという間にショートします。



帳簿では黒字でも、現金が不足すれば経営は継続不可能。
これが「黒字倒産」と呼ばれる現象です。
運転資金を準備しよう(最低3ヶ月分)



カフェ開業では、開業資金とは別に「運転資金」が必須です。
運転資金とは、お店を軌道に乗せるまでの間、支払いを維持するための「予備資金」です。
運転資金の内訳(目安)
月の維持費(家賃・光熱費・広告など) | 3ヶ月分 |
空家賃(開業準備期間の家賃) | 通常:4ヶ月分居抜き物件なら:2ヶ月分 |



この運転資金が創業融資を受けるうえでも、必須条件になります。
金融機関は「潰れない計画」があるかどうかを見ています。
STEP5:リスク対策と改善プラン



よーし、運転資金のことも理解したし、これで開業もバッチリ!
……って、あれ? でも結局うまくいかないお店って、なんで失敗するんだろ?



いい質問ですね。
計画を立てても、現実には想定外のトラブルやズレが必ず起きます。
だからこそ、事前に「もしも」に備えたリスク対策を組み込むことが重要なんです。
よくある失敗例と対策
リスク | よくある事例 | 対策 |
---|---|---|
客数不足 | 想定より集客できず売上が低迷 | オープン前のSNS・チラシなど事前集客/立地再検討 |
長居客ばかりで回転率が悪い | 売上が伸びない・利益が出ない | セルフ方式導入/追加注文の促進/時間制カフェも検討 |
原価・光熱費が高騰 | 食材価格の変動や冬場の暖房費など | メニューの見直し/価格改定/変動費率の定期確認 |
体調不良などで営業不能 | オーナーが倒れて営業停止 | ワンオペ回避の仕組みづくり/業務委託やスタッフ確保 |
リピーターが定着しない | 一度きりの来店で終わる | 顧客満足度UP・口コミ施策・SNS連携キャンペーン |



リスクは「想定して備える」ことで、被害を最小限にできます。
事業計画書に“リスク対応項目”を明記しておくことで、金融機関の信頼も得られます。
- 売上・経費の月次モニタリング
- 顧客アンケートやレビューの定期分析
- メニューの定期的な改訂
- 時間帯別・曜日別の売上分析と人員調整



なんか、カフェって「ただ好きなことをやる」だけじゃ無理なんだね…
でも、こうやって考えたら経営ってちょっと楽しく思えてきた!



その気持ち、すごく大事ですよ。
カフェ経営は感性だけでなく、数字で未来を描くビジネス。
だからこそ、あなたの情熱を「カタチ」にするために、事業計画書が必要なんです。
まとめ



今回のステップでは、「夢を数字で支える」ための基礎的な事業計画の立て方を解説しました。
- コンセプトやターゲットが売上の出発点になること
- メニューと物件が数字を決める根拠になること
- 客単価・回転率・固定費から逆算で売上目標を出せること
- 自己資金ではなく“運転資金”が融資の鍵になること
- そして、「生活安全分岐点」という考え方で、理想と現実のギャップを調整していくこと



事業計画書とは
「自分の道しるべ」であり「他人への羅針盤」です。
誰かに見せるためではなく、自分が迷わないために書くもの。
そして、それが結果的に「融資」や「仲間集め」につながる信頼の土台になります。



なんか、計画ってメンドクサそうだったけど…
ここまで道筋が見えたら、ちょっとやってみたくなってきたぞ!

