
とりあえず、やってみたい業態は決まったけど…カフェとか、立ち飲みとかさ。
でも、まず最初に何をすればいいの?
物件探し?メニュー開発?それとも資金計画?



“やりたい業態はあるけど、次に何から手をつければいいか分からない”――
これは開業を目指す人みんなが通る“最初の壁”です。
でもね、ここで大事なのは、“どんな価値を提供するお店にしたいか”をまず決めることなんです。
- 「コンセプトって何?」がスッキリわかる!
- 失敗しないための“設計の順番”がわかる!
- そのまま使えるコンセプトシートで、すぐ行動できる!



つまり、コンセプトです。
物件も、メニューも、接客も、
全部この“コンセプト”を軸に決めていくことでブレないお店が作れます。
1章|そもそも“コンセプト”ってなに?





“コンセプトが大事”ってよく聞くけど…そもそもコンセプトってなんなの?
おしゃれなテーマとか、キャッチコピーのこと?



その疑問もまさに“あるある”ですね。
コンセプトって、よく“雰囲気”とか“イメージ”と混同されるんですけど、
実はもっと“戦略的なモノ”なんですよ。



コンセプトとは、あなたのお店が提供する“価値”をひと言で表したもの。
つまり、“このお店って、結局どんな意味があるの?”を明確にする“軸”なんです。
たとえばこんな違い
用語 | 内容 | 例 |
---|---|---|
コンセプト | お店が提供する体験価値・世界観の軸 | 「猫と過ごせる癒やし空間」 |
テーマ | 雰囲気やジャンル | 「昭和レトロ」/「アジアンテイスト」 |
キャッチコピー | それを伝える短いフレーズ | 「翼をさずける」(レッドブル) |
2章|なぜコンセプトが必要なのか?



でもさ、料理が美味しければ、お客さんって来てくれるんじゃないの?
わざわざ“コンセプト”なんて考えなくても…



それ、実は多くの人が思いがちな“落とし穴”なんですよ。
もちろん料理の味は大切です。
だけど、それだけじゃ埋もれちゃうんです。
なぜなら、今の時代――
“同じようなお店”がいくらでもあるからです。



だからこそ、“あなたのお店だけの意味”をはっきり伝える必要がある。
それがコンセプトの力なんです。
コンセプトが無いと起きる3つのこと
リスク | 状況 | 結果 |
---|---|---|
店の印象がぼやける | 何の店かパッとわからない | 一度来ても思い出されない |
SNSや広告がバラバラ | 世界観に統一感がない | 認知されづらい |
ブーム終了とともに消える | 流行に乗っただけの店 | 再来店につながらない |



コンセプトは集客とリピートを生み出す“基準軸”です。
メニュー・接客・内装・広告戦略を“一本の線”で貫くために必須となります。
コンセプトが決まると、他の計画も連鎖的に決まる!



でもコンセプトって今考えないとだめなの?
メニューとか内装とか決めた後でもいいじゃん。
抽象的でよくわからないし。



うーん、それがですね。
“あとから”決めると、全部がちぐはぐになってしまうんですよ。
実は、コンセプトは飲食店における“すべての計画の出発点”なんです。
ここが決まっていないと、何をどう決めても“なんとなく”で終わってしまうんです。
コンセプトが決まると…
コンセプト → 決まること | 具体例 |
---|---|
メニューコンセプト | ヘルシー志向?ガッツリ系? |
ターゲットコンセプト | 20代女性?ビジネスマン?観光客? |
立地条件 | 駅前が合う?住宅街が合う? |
価格コンセプト | 高単価 or 安くて回転? |
店舗コンセプト | 内装・レイアウト・導線設計 |
時間コンセプト | 朝型?夜型?テイクアウト特化? |
接客コンセプト | 落ち着いた接客?元気なコミュニケーション? |



なるほど…!
コンセプトを決めたら、“どこに出すか”とか“いくらにするか”までブレずに決められるってわけだ!



コンセプトは“経営判断の軸”であり、“事業計画の起点”です。
決まっていない状態では、計画が曖昧になり、数字も行動も定まりません。
3章|どう作る?コンセプト設計の3STEP



よし、コンセプトの大切さはわかった!
でも…実際どうやって考えればいいの?
いきなり“価値を言葉にしろ”って言われても…ムズいよ〜



そうですよね。最初からピッタリの言葉が浮かぶ人なんてほとんどいません。
でも安心してください。順番にステップを踏めば、ちゃんと形になります。
今日はこの3ステップでいきましょう。
コンセプト設計の3STEP
STEP | やること | ポイント |
---|---|---|
① ターゲットを決める | どんな人に来てほしいか? | 年齢・性別・生活スタイルまで具体的に |
② 5W2Hで整理する | どこで・なぜ・なにを・どうやって | 後述のフレームで思考を見える化 |
③ “独自性”を言語化する | 他のお店と何が違う? | 体験・価値・物語性を一言に凝縮 |
ワークシート例:5W2Hで思考を整理
What(何を) | 提供する商品・体験は? | 野菜たっぷりのグルテンフリーメニュー |
---|---|---|
Why(なぜ) | なぜそれをやるのか? | 健康志向なライフスタイルを支えたい |
Who(誰に) | ターゲット層は? | 30〜40代の働く女性 |
When(いつ) | 営業時間は?時間帯特化? | 朝7:00〜15:00、モーニング強化型 |
Where(どこで) | 立地や空間は? | 駅近、カウンター中心の明るい内装 |
How(どうやって) | どう提供する?接客・形式は? | セルフ形式/テイクアウト併設 |
How much(いくらで) | 客単価は?価格戦略は? | 平均1,200円前後、セットメニュー中心 |


4章|成功する飲食店のコンセプト事例集





よし、コンセプトの作り方はなんとなくわかってきた。
でも、実際にうまくいってるお店の“コンセプト”ってどんなのがあるの?
有名なやつでいいから、いくつか教えて!



いいですね、成功事例を見るとグッとイメージが広がりますよ!
“コンセプト=お店の“約束”や“物語”のようなもの”。
その感覚で見てみましょう。
成功店のコンセプト例一覧
店名 | コンセプト | なぜ成功した? |
---|---|---|
スターバックス | 家でも職場でもない「サードプレイス」 | 居心地・内装・接客すべてが統一された「体験型」空間 |
俺のイタリアン | 高級料理を立ち飲みでリーズナブルに提供 | 高価格帯×低価格設定という“矛盾”がインパクトに |
猫カフェ | 猫と一緒にリラックスできる癒やし空間 | 動物好き×癒やしニーズを直撃、SNS映えでも話題に |
ゴンチャ | コーヒーが苦手な人のための“お茶カフェ” | タピオカブーム後も「お茶」に特化し継続的に支持獲得 |
CoCo壱番屋 | “自分だけのカレー”が作れるカスタム体験 | 辛さ・トッピング・量など自由度がファン化を促進 |



なるほど~! たしかにどこも“なにを提供してる店か”が一発で伝わってくるな。
しかも、単なる商品じゃなくて、体験とか気持ちまで考えられてる感じ!



成功するコンセプトは、“体験価値”と“共感”が明確である。
単なる商品特徴でなく、“なぜこの店なのか?”の答えを持っている。
5章|コンセプトの活かし方|店名・接客・メニューへの落とし込み



よしっ、だんだんイメージが固まってきたぞ!
でも…コンセプトって、“考えて終わり”じゃないよね?
実際どうやって使えばいいの?



ナイス気づきですね!
そうなんです。コンセプトは“考える”より“活かす”ことが大事。
せっかく作ったなら、お店のあらゆる場面でちゃんと反映させましょう。
コンセプトの主な活用シーン
活用シーン | どう活かす? | 例 |
---|---|---|
店名・キャッチコピー | “価値”や“世界観”を言葉で伝える | 「自然と音楽を楽しむカフェ」/「炭火と肉と、ひとりの時間。」 |
接客スタイル | トーンや態度に一貫性を | 落ち着いたカフェ → やさしい声・ゆったり対応 |
メニュー開発 | 料理そのものに“意味”を持たせる | ヘルシー志向 → グルテンフリーや低糖質などを徹底 |
SNSや広告 | 伝えるメッセージもブレなく | 昭和レトロ居酒屋 → フォント・画像も統一感を意識 |



たしかに!
“ただカフェ”じゃなくて、“どんな気持ちになれるか”を意識して店名や接客に活かせば、
お客さんにも伝わりやすいよね。



コンセプトは店の“見えない設計図”。
これを“言葉・接客・商品・空間”に翻訳できると、店全体に統一感が生まれ、顧客の記憶にも残ります。
6章|よくある誤解とNGなコンセプト



ところでさ、“インスタ映え最強!”とか、“話題性重視の激辛ラーメン!”とか、
そういう派手なネタで勝負するのもアリなんじゃないの? 目立つし。



ふふふ…たしかにそれ、よく言われるんですよね。
でもね、“目立つだけの一発ネタ”と“長く愛されるお店のコンセプト”は別物なんです。



“面白そう!”って最初に話題になるのは良いこと。
だけど、コンセプトには“続けられるかどうか”っていう視点も必要なんですよ。
NGなコンセプト設計例とその理由
ありがちパターン | どこがNG? | よくある失敗 |
---|---|---|
“インスタ映えだけ”を狙う | 誰にどんな価値を届けるかが不明確 | 話題が過ぎたら来店ゼロに |
“料理のこだわり”しか語れない | 「体験価値」が伝わらない | 美味しいけど印象に残らない店に |
“自分がやりたいことだけ”に寄りすぎ | 顧客のニーズとズレてる | 来てもリピートされない |
思いつきで要素を詰め込みすぎ | 統一感がなく世界観がバラバラ | メニューも空間も中途半端に |



うっ……そういうの、ちょっとやろうとしてたかも。
“尖ったこと”すれば勝てるって思ってたけど…それだけじゃダメなんだね。



コンセプトに必要なのは、“一貫性”と“顧客目線”。
ウケ狙いだけではブランドにならず、価値の再現性がない。
“誰に、なぜ、何を届けたいのか”を軸に据えるべきです。
コンセプト設計をサボって失敗した飲食店たち
① なんでもアリの「器用貧乏カフェ」
あの店は、なんでもあった。
朝は焼き魚の和定食、昼はスパイスカレー、夜はタパスとクラフトビール。
メニューは多彩、内装もにぎやか、SNSの投稿も元気いっぱい。
でも、客は迷っていた。
「ここって何の店?」
答えられる人はいなかった。
結果、強みがなく、選ばれる理由も生まれず、常連は育たなかった。



“選ばれる理由”がない店は、選ばれない。
② バズったのに廃れた「映えだけカフェ」
話題の火付け役は、レインボーパフェだった。
カラフルな色合いとユニークな器で、SNSには毎日何百件もの投稿が流れた。
一時は行列もできたが、それは一度きりの来店客だった。
パフェ以外は印象に残らず、スタッフの接客も流れ作業。
空間も物語も“映えの背景”がなかった。
話題が過ぎたあと、残ったのは空席と、更新の止まったSNSアカウントだった。



「バズることと、愛されることは違います。」
③ こだわりが独りよがりになった「本気のスパイスカレー店」
店主は情熱の人だった。
カレーに使うスパイスは100種類。料理は芸術だった。
でも、客は苦しそうに食べていた。注文方法は複雑、説明は長く、食べ方にもルールがあった。
「すごい」とは言われた。でも、もう一度行こうとは思われなかった。
店主は「お客がわかってない」と言った。
だが、本当に“伝わる設計”をしていなかったのは店のほうだったのかもしれない。



“伝えたい”と“伝わる”は別物です。
7章|無料テンプレートで!コンセプトシートをつくろう





なんかさ、頭の中に“こういう店にしたい!”ってイメージは湧いてきてるんだけど…
うまく言葉にできないんだよね…。
ノートに書いてもグチャグチャになるし…



うん、それはすごく自然なことですよ。
だからこそ使ってほしいのが――コンセプトシートなんです!



考えを“整理して”“言語化して”“人に伝えられる形”にするには、紙に落とすのがいちばん早いです。
アイデアを“設計図”に変える道具なんですよ。


「店舗コンセプトシート」の使い方
項目No | セクション名 | 内容記入欄の説明 | ヒント(例・補足) |
---|---|---|---|
1 | 基本コンセプト | お店が提供する価値・世界観 | 「地元の人が安心して立ち寄れる」「健康志向を応援」など |
2 | ターゲット | 商圏ターゲット/年齢層/性別/来店スタイル | 「20~40代の女性・住宅街の住民・主婦」「会社帰りの一杯」 |
3 | 利用シーン | 利用頻度/滞在時間/ピーク帯/定休日 | 「週1~2回・15~30分滞在・昼休みと夕方が山場」 |
4 | 立地条件 | 商圏の特性/物件の広さ・家賃 | 「駅前5坪・家賃10万円以内」「住宅街の角地」 |
5 | 目標客単価 | 価格構成を記入(主要メニューやセット) | 「平均単価 1,100円:ドリンク600円+軽食500円」など |
6 | 主要メニュー | 看板商品や売上を支えるメニュー | 「自家製サラダボウル」「地元野菜スムージー」など |
7 | 接客サービス | お店の接客方針やリピートにつながる工夫 | 「気軽に声をかける」「メニュー提案で個別対応」 |
8 | 店内イメージ | 店内の雰囲気・内装・照明など | 「木目×観葉植物」「明るくて女性が一人でも入りやすい」 |
9 | 広告・マーケティング | 認知・集客・販促戦略 | 「SNSで発信/地元フリーペーパー/イベント連携」 |
「店舗コンセプトシート」の記入例





コンセプトシートの記入例になります。



このコンセプトシートは下記のボタンからダウンロードしてご自由にお使いください。
「設計図がある店と、感覚で動いている店は、精度と安定性において決定的な差が出ます。
“見える化”こそが、戦略の第一歩です。
\コンセプトシートはこちらから /
8章|まとめ|コンセプトがすべての始まり



今回は“コンセプト設計”について、じっくりとお話してきましたね。
コンセプトとは、
“お店でどんな価値を提供したいか”を言語化し、
メニューや接客、店名にまで一貫性を持たせるための“設計図”です。
- 店名・キャッチコピーの説得力が変わる
- SNSや販促物がぶれずに刺さる
- スタッフ教育がスムーズになる
- メニュー開発の方針が明確になる
- 「また来たい」と思わせる体験を届けられる



事業計画・資金調達・許可申請など、飲食店開業の工程は多岐にわたりますが、
そのすべての起点になるのが“コンセプト”です。
逆にここが曖昧だと、
“なんとなく”のメニュー、“なんとなく”の内装、“なんとなく”の販促になる。
そして、“なんとなく”のまま、消えていきます。



やっぱり、“ぼくのやりたいこと”だけじゃダメなんだな。
“誰かのために、どんな店を作るのか”って視点で、ちゃんと考えないとね。



さあ、このコンセプトを元に
次はその想いを事業計画に落とし込んでいきましょう。

