
前の記事でスナックが最強なのはよ〜くわかったわ。
じゃあ実際に「開業する」ってなったら、いくらぐらいお金が必要なの?
そしてそのお金って、どうやって用意するの? 何から始めればいいのか、もう頭がこんがらがってるんだけど!



それはみんなが最初につまずくところだね。でも大丈夫。
一つひとつ順を追って、整理します。
まず必要なのは「開業のための資金」。
それを用意するためには、創業融資を活用するのが王道で、そのために必要なのが…そう、「事業計画書」です。
- スナック開業に必要な初期費用の内訳と目安金額がリアルなシミュレーションで把握できる
- 創業融資に通るために必要な事業計画書の構成と書き方が理解できる
- 開業後の返済計画や生活費を含めたキャッシュフローの見通しを立てる方法がわかる



事業計画書とは、単なる書類ではありません。
開業者の意思と予測、資金の根拠を示すビジネスの設計図です。
そして、創業融資の審査では最も重視される資料です。
目的はただ一つ。「この人ならちゃんと返してくれる」と、金融機関に納得させることです。
そもそも事業計画書ってなに?





でもさ、そもそも「事業計画書」って何を書くものなの?
なんか難しそうなイメージがあるんだけど…提出するためだけの書類って感じ?



事業計画書は融資のためだけじゃなく、自分の頭を整理するためのツールでもあります。
何をやるか、誰をターゲットにするか、どれくらい売ってどれくらい使うか。
これを言葉と数字でまとめておくと、開業後の行動に迷いがなくなります。
事業計画書とは
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 創業融資を通す/事業の全体像を整理する |
構成 | ①事業の概要 ②商品・サービス ③市場分析 ④収支計画 ⑤資金計画 ⑥リスク対策 |
提出先 | 日本政策金融公庫・信用金庫などの金融機関 |
書き方のポイント | 自分の強みや市場ニーズを裏付ける「数字」と「根拠」が必要 |



思ったよりシンプルなんだね!ビジネス経験ゼロの私でも、構成がわかっていれば書けそう!



今回はスナックに特化した実例付きで解説していくから安心してください。
このあと、事業の概要からスタートして、収支計画、資金調達、リスク対応まで、しっかりと道筋を立てていきます。
まずは“事業の概要”をまとめよう



さてと…事業の概要って、何を書けばいいの?「スナックを開業します」だけじゃダメだよね?



まずは「どんなお店を、誰のために、どこでやるのか」をざっくり整理しましょう。
いわば、自分の想いと方向性をひとことで表すパートなのです。
前の記事のモデルケース物件で開業すると仮定して事業計画書を作ってみましょう。
郊外の小規模物件の場合(居抜き)


賃料・費用 | 5万円 (+管理費等 1万5,000円) 坪単価:約6,250円/坪 敷金:10万円(2ヶ月) 礼金:なし 仲介手数料:5万円 造作譲渡料:無料 |
---|---|
専有面積 | 26.45m² (8坪) |
住所 | 北海道札幌市北区新琴似一条 |
交通 | 新川駅(徒歩9分)|北34条駅(徒歩18分) |
階/階建 | 1階 /2階建 |
築年月 | – |
駐車場 | なし |
備考 | 新琴似1番通りに面した、〇〇会館・1階インテナント居抜きテナント!!居抜きテナント・内装設備等現状渡しです。 |
項目 | 書くべき内容 | 例(綺羅星スナック) |
---|---|---|
屋号 | 店名 | スナック月灯り |
所在地 | 店舗の場所 | 札幌市北区新琴似(地下鉄駅から徒歩10分) |
開業目的 | なぜ始めるのか | 地元の人と気軽に話せる居場所を作る |
事業内容 | なにをやるのか | スナック営業(会話・カラオケ・ボトル提供) |
想定顧客 | どんなお客さんか | 40〜60代の地元サラリーマン層 |
営業日・時間 | 週何日、何時から何時まで | 週6営業、17〜25時 |



とくに「なぜその場所で、なぜその業態なのか」には、個人のエピソードがあると説得力が増します。



たしかに、銀行の人も「この人ならやっていけそう」って思える動機がある方が安心だよね!



そのとおりでし。
次は「どんな商品・サービスを提供するか」、つまりお店の魅力を説明していこう。
商品・サービスをどう設計するか?



スナックって、基本的にお酒とカラオケだけのシンプルな業態だけど、ちゃんと商品設計って必要なの?



必要です。
スナックはシンプルだからこそ「どこで差別化するか」が重要。
特別な料理やお酒がなくても、お客さんが「また来たい」と思える体験や雰囲気づくりが商品そのものなのです。
要素(4P) | 内容 | スナックへの落とし込み例 |
---|---|---|
Product(商品) | 何を提供するか | 会話・カラオケ・落ち着ける空間・安心感 |
Price(価格) | 料金設定 | セット3,000円〜、ボトルキープ5,000円〜 |
Place(場所) | 店舗の立地・内装 | 郊外の住宅街近く、アットホームな居抜き物件 |
Promotion(宣伝) | どうやって知ってもらうか | 既存客の紹介、LINE登録、店頭看板、ちょっとしたイベント |



とくにスナックの場合、「ママの人柄」=最大の商品です。
売れる商品は「カリスマ性・安心感・聞き上手」などの個性と結びついています。
差別化アイデア例
差別化ポイント | 具体例 |
---|---|
雰囲気 | 昭和レトロ/モダンバー風/アニメ好きのママ |
サービス | お通し3品つき/手作りおでんがある/誕生日会を毎月実施 |
ママの魅力 | 地元出身で会話が安心/業界歴20年で人脈豊富/元OLで話題豊富 |



なるほど、スナックって“商品”を作るというより、“人”と“空間”を育てる感じなんだね。



その気づき、すごく大事です。
次章はどんなお客さんが来てくれるのか、どう集めるかを考える「市場分析」だね。
市場分析で成功確率を上げよう



そっか、商品やサービスのことはだいぶ見えてきたかも。
でも…「うちみたいなお店、ほんとに人来るの?」ってやっぱり不安なんだよね。



そこで役に立つのが「市場分析」。
簡単にいえば、お客さんのことを知る・地域の状況を知るってことです。
数字やデータに基づいて考えると、不安が「仮説と対策」に変わっていきます。
スナック開業のための市場分析の基本視点
分析項目 | 内容 | チェックポイント |
---|---|---|
商圏分析 | 店の半径500m〜1kmの人口・年齢層 | 40〜60代が多いか?飲み歩きエリアか? |
競合分析 | 同業他社(スナック、ガールズバー、居酒屋) | 席数・料金・営業時間・繁盛状況 |
自店の強み | 自分の魅力・お店の雰囲気・価格帯 | 差別化できる部分があるか? |
顧客像(ペルソナ) | ターゲット客のイメージ | 50代男性会社員・地元常連客など |



競合分析では、価格やサービスだけでなく、「どんな客層が集まっているか」も見てください。
また、立地と客層のミスマッチは失敗の原因になります。
SWOT分析で自分のビジネスを整理してみよう
内部要因 | 外部要因 |
---|---|
強み(S): 人柄、接客力、居抜き物件のコスパ | 機会(O): 地元の再開発、近隣に競合が少ない |
弱み(W): 経営経験がない、知名度ゼロ | 脅威(T): 近くに人気店ができる、人口減少地域 |



確かに「なんとなく不安」だった部分が、こうやって表にすると見えてくるんだね。
だけど、これって結局、どう活かせばいいの?



そこで登場するのが「クロス分析」です。
強み(Strength)と機会(Opportunity)を掛け合わせて「攻めの戦略」を、
弱み(Weakness)と脅威(Threat)を掛け合わせて「守りや改善のヒント」にするんです。
クロス分析のフレーム(例)
観点 | 戦略の考え方 | 例(スナック開業想定) |
---|---|---|
S × O (積極戦略) | 強みを活かしてチャンスをつかむ | 元営業職の接客力 × 再開発地域=地元常連の囲い込み |
S × T (差別化戦略) | 強みで脅威に対抗する | 競合出現に対して、地元密着&手作りメニューで勝負 |
W × O (育成戦略) | 弱みを補いながらチャンスを活かす | 経営未経験 × 居抜き物件の低コストでまずは スモールスタート |
W × T (防衛戦略) | 弱みと脅威の最悪の組み合わせを回避 | 知名度ゼロ × 人気店近く → 初月から広告予算とSNSを重点配置 |



このようにSWOT分析を元に「じゃあどうする?」を考えるのが事業計画の本質です。
金融機関も、こうした思考の痕跡を見ると安心します。



そっか…「自分の強み」と「この地域での可能性」がつながると、一気に現実味が出てくるね!
収支計画で利益を見える化しよう



ついに数字の話か〜。売上から経費を引いた利益が残ればいいっていうのはわかるけど、何をどう計算すればいいの?



安心してください。
スナックはシンプルなビジネスモデルだから、基本の構造を押さえればすぐにイメージがつかめるよ。
売上の予測ってどう立てるの?



スナックの売上は大きく分けて以下の式で成り立ちます



実際のモデル(8坪20席のスナック)を使って、現実的な売上を試算してみましょう。
区分 | 平日 | 金・土 |
---|---|---|
客単価 | 3,000円(アイドル時)5,000円(ピーク時) | 同左(×1.2) |
客数(平均) | 3人(アイドル時)5人(ピーク時) | 同左 |
営業日数 | 14日 | 8日 |
売上 | 476,000円 | 326,400円 |
月商合計 | 802,400円 |
経費はどれくらいかかる?



売上から引かれる「原価」や「経費」は以下の通りです。
費用項目 | 金額(円) | 備考 |
---|---|---|
原材料費 | 240,700 | おつまみや割り物の原価 (売上の25%) |
水道光熱費 | 77,000 | 電気・ガス・水道代 (売上の7%) |
広告・通信 | 96,300 | スマホ代など |
家賃 | 105,600 | 月6.5万円×12ヶ月 |
減価償却費(内装等) | 44,500 | 初期費用を年数で割る |
消耗品 | 48,100 | 備品類 (売上の5%) |
合計(年間) | 612,200 | 年間経費合計 |
利益はどのくらい残る?
区分 | 金額(円) |
---|---|
売上(年間) | 9,629,000 |
経費(年間) | 6,122,000 |
利益(年間) | 3,506,000(約350万円) |



お客さんが平均8人くらいでも350万円…
ちゃんと計画立てれば、少ない人数のお客さんでもしっかり利益が出るんだね!
キャッシュフロー計画書で見るスナック開業後の5年間の現実





ちゃんと開業できても、その後の生活が不安なのよね。
いくら「お客さんが5〜8人いれば回る」って聞いても、お金がちゃんと残らなかったら意味がないし…



だからこそ大切なのが「キャッシュフロー表」なのです。
売上があっても、手元に現金がなければ返済も生活もままならない。
だから融資審査でも、このキャッシュフロー計画はめちゃくちゃ重要視されます。



キャッシュフローが把握できていれば、作為的に赤字を維持する戦略(節税)や、未来の資金繰りに備える投資判断も可能になります。
まずは「必要な融資額」を知ろう



以下は、実際に札幌・8坪20席のモデル物件を前提にした開業資金シミュレーションの結果です



物件所得費: 500,000円
外装工事費: 224,000円
内装工事費: 2,032,000円
厨房設備費: 200,000円
什器備品費: 2,137,000円
運転資金: 1,500,000円
総額: 6,593,000円(目標自己資金:1,977,900円)
でした。
シミュレーションはこちらで計算しています。


2. 自己資金200万円、融資450万円で組んだ場合の返済計画
借入金額 | 金利 | 返済期間 | 月々の返済額 |
---|---|---|---|
4,500,000円 | 年利2.2% | 10年 | 約42,000円(年間:506,000円) |



うう、計画の時は楽しいけど…450万円の借金を10年間しっかり返していくのね…。
キャッシュフローで見る、開業後のお金の動き
「売上があってもお金がない」のはなぜ?



お店の経営で重要なのは、「黒字かどうか」よりも「現金が残っているかどうか」です。



そんな失敗を防ぐために必要なのが、キャッシュフロー計画書。
これは「毎年どれだけお金が入ってきて、どれだけ出ていくのか」「残るのはいくらか?」を数値で確認できる大事な計画です。
開業5年分のキャッシュフロー予測
年度 | 総売上 | 営業利益 | 月平均生活費 | 年間返済額 | 期末現預金(残金) |
---|---|---|---|---|---|
1年目 | 約963万円 | 約356万円 | 25万円 | 約51万円 | 202万円 |
2年目 | 約973万円 | 約345万円 | 25万円 | 約51万円 | 240万円 |
3年目 | 約992万円 | 約353万円 | 25万円 | 約51万円 | 290万円 |
4年目 | 約1,021万円 | 約367万円 | 25万円 | 約51万円 | 351万円 |
5年目 | 約1,063万円 | 約385万円 | 25万円 | 約51万円 | 431万円 |



3年目以降ならもっと生活費にまわして全然だいじょうぶそうね。
- 自己資金200万円/借入金450万円
- 借入金は10年返済、年利2.2%
- 月々の生活費(事業主取り分)は25万円
- 売上は毎年少しずつ成長(年1〜4%UP)



あれ…?ギリギリすぎて不安になるわね。



初年度はどの業種でも設備投資が重くなるけど、2年目から一気に回復するんだよ。
見えないコスト | 例 |
---|---|
設備の故障修理 | 冷蔵庫の入替など |
リニューアル | 看板・内装の変更 |
税金・保険料 | 消費税・国民健康保険など |



安全余裕率を確保しておくことが重要です。
返済・生活・予備資金すべてをまかなえるバランスが整ってこそ、健全なスナック経営です。
結論:返済も生活も安心できるスナックモデル



このキャッシュフロー予測から見えてくるのは…
- 5年後も安定した黒字経営
- 自己資金が少なくても返済可能
- 生活費を取りながら資金を積み増せる



あくまで、常連8人を目標にスタートは継続面では計画の練り直しが必要です。
しかし、何十年も経営して減価償却も返済も終了して、なおかつ持ち家だった場合はもっとこれくらいの客数でも経営が可能である証拠です。
スナック開業におけるリスク対策と計画の見直し





お金の流れはわかってきたけど、世の中そんなに都合よくいくとは限らないわよね。
たとえば急に売上が下がったら?体調を崩したら?…なんか不安。



まさにそこが、事業計画の最後にして最重要ポイントです。
どんなに完璧な計画も、「予測外のトラブル」には備えが必要だからね。
リスク対策の基本は「想定すること」
リスクの種類 | 例 | 対応策の例 |
---|---|---|
売上の急減 | 繁忙期の終わり・常連の離脱 | 固定費を抑える、フリー客を集める施策 (SNS・看板・サイネージなど) |
体調不良や事故 | ママが休業になる | ワンオペを避ける or 信頼できる代行スタッフを確保 |
物価上昇 | 酒・光熱費・家賃の値上げ | 価格改定のタイミングを年1で設ける |
近隣トラブル | 騒音・迷惑客・近隣からの苦情 | 店舗マナー教育、契約時のルール明記、顧問行政書士の活用 |



リスクは避けるものではなく、前提に組み込んで計画しておくべき項目です。
プランB=「戦略的な赤字」



収支がマイナスでもキャッシュフローが回っていればOKなケースもあります。
例 | 意図 |
---|---|
2年目まで赤字 | 認知度アップのための広告を強化 |
リニューアルで赤字 | 新客層獲得のための投資 |
単価を下げて集客 | SNSで話題を作る・口コミを狙う |



つまり、「赤字=失敗」ではないという視点を持ってください。
むしろ「どこまでなら赤字で耐えられるか?」を把握するのが経営者です。
月次で「見直す」仕組みを作る
月初 | 月末 |
---|---|
今月の売上目標・集客目標の再確認 | 売上・経費・キャッシュ残高の確認 |
仕入・予約・SNS告知の戦略 | 支出の見直し・翌月への反省と計画 |



経営とは「予測と対応」の繰り返しさです。
でもそれができるようになれば、多少の波風には負けない“しぶといお店”が作れるようになるでしょう。
まとめ



今回は事業計画書の作り方を見てきました。
お店を始めるにも、まずは資金が必要。その資金を集めるために欠かせないのが、しっかりとした事業計画書でしたね。



事業計画の中でも特に重要なのが収支計画。
これは、「頭の中にある理想のビジネス」が現実的に回るのかどうかをシミュレーションするためのものです。
きちんと返済ができるかどうかを、数字で証明することがポイントになります。



ふむふむ、私のビジネスがちゃんと成り立つってわかったら…
ついに政策金融公庫で創業融資を審査ね。
もう、ここまで来たら後戻りはできない…!
絶対失敗しないように勉強しなきゃね。

