
やっぱりバーを開業するには、何百万円もかかるのかな?
昔バイトした店のママは『内装に800万、厨房で300万』とか言っててさ……私、そんなに貯金ないよ……。



その不安、みんな通る道です。
でも実際には居抜き物件を使ったり、中古機器を上手に活用すれば、想像よりもずっと少ない自己資金でスタートできる場合もあるよ。
- 10坪のバー開業に必要な総費用のリアルな目安
- 居抜き/スケルトン物件でどう金額が変わるか
- 開業費用を減らせる“3つの節約ポイント”とは?



札幌中心部で10坪のバーを開業するなら、総額はおおよそ1,000万円。
ただし、自己資金は300〜400万円あれば可能です。
キーポイントは、“居抜き物件の活用”と“中古機器”、“補助金申請”の3点です。
10坪のバーってどんな規模?想定モデルを紹介





“10坪のバー”って、どんなイメージなの?
小さすぎてお客さん入らなそう……。



いいえ。10坪は『ちょうどいい広さ』なのです。
カウンター6席+ボックス席6席、これで十分“おひとり様”と“ペア客”の両方をカバーできます。
スタッフもワンオペで回せるサイズだから、人件費も抑えやすいのです。
想定モデル(札幌・すすきのエリア中心部)
項目 | 内容 |
---|---|
延床面積 | 約12.3坪(約40㎡) |
席数 | カウンター6席 + ボックス6席(計12席) |
想定家賃 | 約15〜20万円(共益費込み・ビル3〜5階) |
物件形態 | 居抜き物件(内装・厨房機器あり) |
運営体制 | 基本ワンオペ(混雑時のみヘルプ1名) |



このサイズなら、少人数で静かに飲める空間を求める客層に刺さります。
インスタで話題になっている“隠れ家バー”も、ほとんどがこの10坪前後。
空間を“狭い”ではなく“濃い”と捉えるのがコツです。
小さなバーの開業資金はいくらかかる?



結局さ…いくらあれば小さなバーって始められるの?ネットだと100万円〜1000万円とか言ってることバラバラで…。



確かに開業資金はピンキリだけど、ここでは“すすきの中心部12.3坪”の実在物件をモデルに、超リアルな開業資金を出してみたよ。
モデルケース|すすきの12.3坪の居抜き物件で開業した場合
費目 | 概算費用 | 備考 |
---|---|---|
物件取得費(保証金・礼金など) | 約200万円 | 賃料の約10ヶ月分を想定 |
内装・設備改修費 | 約250万円(居抜き) | 看板変更、簡易なレイアウト変更など |
食器・グラス・備品 | 約100万円 | カウンター中心の最小構成 |
資格取得・許認可申請費用 | 約10万円 | 衛生責任者、深夜営業届けなど |
POS・レジ関連 | 約10万円 | 初期導入+月額プラン(例:スマレジ) |
キャッシュレス導入 | 0円〜(導入無料) | 初期導入無料のサービスを活用 |
ホームページ制作 | 約5〜10万円 | 3do1ライトプランなど |
当面の運転資金(3ヶ月分) | 約500万円 | 家賃・仕入・人件費含む |
合計 | 約1,000万円〜 | 居抜き活用の場合 |



なお、スケルトン物件の場合は+300万〜500万円と見積もるのが安全です。
ただし、全体費用のなかで最も変動が大きいのが物件取得と内装費用です。
実際の物件例から見る必要な費用
繁華街中心部 8坪居抜き物件の場合



札幌のテナント検索サイトで見つけた実際の物件で計算してみましょう。
繁華街の雑居ビルになります。
席数はカウンター9席のみなので若干客層や客単価を意識する必要があります。


賃料・費用 | 賃料:11万円 (+管理費等 5,000円)(敷)60万円(礼)なし(仲)11万円 保証金:なし |
---|---|
専有面積 | 26.45m² (8坪) |
住所 | 北海道札幌市中央区南五条西〇丁目 |
交通 | すすきの駅(徒歩3分)|豊水すすきの駅(徒歩4分) |
階/階建 | 3階 / 7階建(地下1階) |
築年月 | – |
駐車場 | なし |
備考 | すすきの中心部の好立地ビル!!バー居抜きテナントになります(^^)/♪賃料が安めなのでランニングコストも安心です♪♪ |



開業費用を計算します
物件所得費: 1,100,000円
外装工事費: 224,000円
内装工事費: 2,032,000円
厨房設備費: 200,000円
什器備品費: 2,137,000円
運転資金: 1,807,000円
総額: 7,500,000円(目標自己資金:2,250,000円)



すすきの中心部だとやっぱり8坪でも10万円するんだね。
お客さんの母数はすさまじいけど、その分パイの取り合いも激しいと…



これまでの金額はすべて過去のデータから計算されたおおよその金額になります。
あくまで参考としてみておいてください。


開業費用を減らせる“3つの節約ポイント”とは?



やっぱり開業するには多額の費用がかかるのね…
どうにか節約する方法はないの?



もちろん、、工夫次第で初期費用=自己資金の出費を減らす方法はありますよ。
代表的な節約ポイントは以下の3つです。
節約ポイント | 内容 | 補足・導線 |
---|---|---|
① 居抜き物件の活用 | 内装・什器付きで初期費用を圧縮 | 詳しくはこちらの記事 (準備中) |
② 中古&リースの活用 | 厨房設備・家具などを新品で買わずに揃える | → 詳細は次の章で |
③ スモールスタート(副業型など) | シェアバーや間借り開業から始めて自己資金を温存 | シェアバーについてはコチラ |
初期費用を抑えるなら「中古」か「リース」を使いこなせ!



でもさ、やっぱりバーって冷蔵庫とか製氷機とか、揃える設備が多いんだよね…。
新品で揃えたら高そうだし、予算オーバーしちゃいそうで不安。



小さなバーなら、中古の厨房機器や什器をうまく活用すれば、初期費用は数十万円単位で下がります。
それでも不安な方には、リースという選択肢もありますよ。
選択基準 | 中古品がおすすめな人 | リースがおすすめな人 |
---|---|---|
初期費用を抑えたい | 高額設備を格安で揃えたい | 一括購入の資金がない |
品質保証を重視したい | メンテナンス済みの商品を購入 | リース料に保守費が含まれる |
短期間の利用を考えている | 一時的な設備なら中古もOK | 契約終了で返却可、柔軟に入れ替え可能 |
最新の設備が必要 | 中古市場に最新モデルが少ない | 常に最新機種が使える |



え、リースってレンタルとは違うの?それに分割払いとはどう違うの?



リース=借り物(所有権はリース会社)
分割払い=自分の物(所有権は自分)
という違いがあります。



リースの場合、支払ったリース料はすべて「経費(損金)」として処理できるのが大きなメリットです。
一方、分割払いだと「減価償却」として資産計上され、税務処理の仕方が異なります。



目的に合わせて柔軟に選ぶのがポイントです。
「初期費用をできるだけ抑えたいなら中古品」、「長期利用かつメンテナンス重視ならリース」。
両方を組み合わせるのも賢いやり方ですよ。



なるほどー!損金やら経費やら、なんかよくわかんないけど、お店の方向性が定まってない今は、まずは中古で試して、必要に応じてリースに切り替えるっていうのもアリなのね!
自己資金はどれくらい必要?資金調達の考え方





仮に1,000万以上かかるとして…そんなに一気に貯められないよ。
自己資金ってどれくらいあれば足りるの?



自己資金の目安は、全体の30〜50%が理想とされてます。
つまり、1000万円の開業資金なら、約300〜500万円が標額になります。
自己資金の目安と資金調達方法
方法 | 特徴 | 想定可能額 |
---|---|---|
自己資金(貯金) | 実績や信頼性にもつながる | 〜370万円 |
親族・知人からの借入 | 金利が低く融通がききやすい | 数十万〜200万円 |
日本政策金融公庫 | 無担保・無保証人でOK。開業向け制度が豊富 | 最大1000万円程度 |
クラウドファンディング | 支援者を集めながら資金調達できる | 〜100万円 |
シェアバーなどの副業 | 初期費用をかけずに収益を得る練習になる | 月売上10万〜 |



開業資金については、実に9割の方が「創業融資」を利用しています。
その融資を受けるためには、創業計画書の作成が必須です。
特に日本政策金融公庫の審査では、現実的な収支予測と自己資金の妥当性が重視されます。



創業計画書を作るには、その土台となる事業計画書が必要です。
中でも重要なのが、事業の方向性と収支計画を明確にすること。
これから、「FLR構造(売上・原価・人件費)」を用いて、リアルな収支バランスを見える化していきましょう。
まずは「売上」の源を考えよう──鍵はメニュー開発



事業計画っていうと、最初に資金の話から入っちゃいそうだけど……
実際のところ、売上ってどうやって決めるの?



いい質問ですね。
飲食店、バーでも「売上=平均客単価×客数×営業日数」で構成されます。
つまり、まずはどんなメニューを、どんな価格帯で、どんな人に提供して、どれくらい滞在して、いくら使ってくれるのかを考えます。
メニュー設計から売上構造を見える化
メニュー例 | 単価 | 原価 | 粗利 | 原価率 |
---|---|---|---|---|
チャージ(お通し+席料) | ¥500 | ¥100 | ¥400 | 20% |
ハイボール | ¥600 | ¥90 | ¥510 | 15% |
カクテル(甘め) | ¥800 | ¥200 | ¥600 | 25% |
ソフトドリンク | ¥500 | ¥80 | ¥420 | 16% |
ボトルキープ | ¥4,000 | ¥1,200 | ¥2,800 | 30% |



メニューごとの平均原価率を出すことで、全体のFL(Food・Labor)構成の見通しが立ちます。
たとえば上記のような構成なら、平均原価率20%前後になります。



このメニューをベースに、
たとえば【客単価2,500円×1日20名×月25営業日】=月売上125万円というモデルが描けますね。
- 住宅街・ローカル密着型 → チャージ無し、ドリンク500〜700円
- 繁華街・夜職系 → チャージ500〜1,000円、ドリンク700〜1,200円
- インバウンド/観光客狙い → 特別感のある価格設定とオリジナルドリンクを



売上って「お客さんがいくら使ってくれるか」で決まるから、
先にメニューを設計することで、経営の全体像が描きやすくなるんだね!
FLR構造で収支バランスをチェックしよう



売上が見えたら、次は「いくら残るか」を知りたいな……。
どれくらいの利益が出るのか、目安がほしい。



そこで登場するのが「FLR構造」です。
バー経営においては、F=原価(Food & Drink)、L=人件費(Labor)、R=家賃(Rent)の3つが、主要なコスト構成です。
FLRとは? ざっくりバランスの目安
項目 | 割合(目安) | 補足 |
---|---|---|
F(原価) | 20〜30% | 飲食店のタイプで変動。バーなら比較的低く抑えやすい。 |
L(人件費) | 20〜30% | ワンオペならほぼゼロも可能。 |
R(家賃) | 10〜15% | 月売上の1割が目安。10万円以内に収まると◎。 |
モデルケースでFLRを見てみよう
項目 | 金額 | 内訳・コメント |
---|---|---|
原価(20%) | 25万円 | 飲み放題やドリンク類の仕入れ |
人件費(0〜10%) | 0〜12.5万円 | ワンオペなら0円。バイト1名で変動あり |
家賃(10%) | 12.5万円 | 10坪・駅近の場合の目安 |



FLRで費用の大枠をつかむと、どこで削れるか・どこに投資すべきかがわかります。
たとえば、人件費を抑えてその分SNS代行やPOS導入に使うなど、戦略が立てやすくなります。



FLRは事業計画書や創業融資の審査でも重視されます。
特にワンオペ経営や家賃を抑えたモデルは、資金面でも評価されやすい特徴があります。



なるほど……!
FLRで「自分のバー経営モデルの強みと弱点」がはっきり見えるんだね!
FLRをもとに事業計画書を書いてみよう



でも、FLRで収支バランスをつかんだだけじゃ、創業融資の申請には不十分なんだよね?
実際には何をどう書けばいいの?



そうですね。FLRはあくまで「事業の骨格」。
ここから「事業計画書」に仕立てていくには、次の4ステップで整理していくとスムーズです。
事業計画書の4ステップ
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
① 売上予測 | 客単価・来客数・営業日で計算 | 無理のない数字で「根拠」を示すこと |
② 経費の内訳 | FLRをベースに家賃・光熱費・通信費なども | 数値の整合性が重要 |
③ 自己資金と借入額 | 自己資金は総費用の30%以上が理想 | 少なすぎると審査が厳しくなる |
④ 事業の目的と将来性 | なぜこの事業なのか/目指す姿 | 自分の言葉でOK!熱意が伝わること |



日本政策金融公庫などの創業融資では、収支計画の現実性・自己資金の割合・代表者の本気度が大きな評価ポイントです。



ポイントは「見せかけじゃないリアリティ」です。
たとえば「月売上125万円」って数字を出すなら、「2,500円の客単価 × 20人 × 25日」といった根拠ある算出が必須です。



なるほど……
FLRで数字の全体感をつかんで、その数字の根拠を「売上やメニュー」から逆算して書いていけばいいんだね!



はい。
これで具体的な収支計画が成立します。
FLRから事業計画書へ落とし込むコツ



FLR構造で「儲かる構造」がざっくり見えたら、それを元に事業計画書で数字を具体化する──これが小さなバーの開業準備で一番の肝になる部分です。
メニュー設計・来客数の仮説・経費の内訳……全部がつながって、はじめて融資に通るだけの説得力が生まれるんですよ。



収支計画書は、売上が多ければ良いわけではありません。
「なぜその数字になるのか?」という根拠と整合性が重視されます。
創業融資の審査官は、数字のウラにある現実的なストーリーを見ています。



なるほど……じゃあ、そのためには資金の“出どころ”も整理しておかないとダメだよね。
自分でどれだけ出して、どれだけ借りるのか。
…それって、やっぱり「自己資金の額」が大事ってこと?



はい。創業融資を受けるには一定の自己資金が必要です。
次の記事では創業融資を受けるための方法を解説します。