甲斐承太郎ぼくが理想とするお店の形で開業したい気持ちはあるんだけど、失敗したらどうしよう……。
売上とか経費とか、数字の計算って難しくてよくわからないんだよね。



その不安、とてもよくわかります。
何年も温めてきた構想を現実にするには、頭の中の理想を“数字という見える形”にすることが不可欠です。
今回は『事業計画書』の第一歩として、あなたの構想が本当に儲かるのかを確認する『収支予測』の作り方を解説します。
- 売上予測は「客単価 × 席数 × 回転率」の掛け算で出す
- 経費予測は「家賃・原価・その他経費」をざっくり洗い出す
- 複雑な計算は不要。専用の「無料エクセルテンプレート」に入力するだけ



飲食店の収支予測は、決して難しくありません。
上記の3つのポイントを押さえるだけで、8割は完成します。
事業の成功は、始める前の計画で9割決まります。
この記事を読み終える頃には、自分のお店の『リアルな数字』が見えるようになります。
第0章:そもそも事業計画書って何?「創業計画書」との違い





なんか急に『事業計画書』って言葉が出てきたけど、それって何?
銀行からお金を借りる(創業融資)ときに書く、あの難しい紙のこと?



承太郎さん、それは日本政策金融公庫などに提出する
『創業計画書』ですね。
もちろん融資を受けるためにも必要ですが、今回作成しようとしている『事業計画書』の最大の目的は、融資だけではありません。
あなたがこれから進むべき道を照らす『羅針盤』を作ることなんです。



経営は『計画が9割』です。
残りの1割は、その計画が合っていたかどうかの『答え合わせ』に過ぎません。
最初から完璧な正解はありませんが、事業計画書という羅針盤に沿ってPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことで、致命的な失敗を最低限に抑えることができるのです。



その羅針盤を作るために、まずは
『このお店は本当にお金が残る(生き残れる)のか?』
という土台を固める必要があります。
それが、今回解説する『収支予測』です。
第1章:事業計画書とは?「失敗しないお店」の絶対条件



売上とか経費とか、まだお店も開いてないのに予測するなんて難しくない? 結局、やってみないとわからないじゃん……



そのお気持ち、よくわかります。
見えない未来を数字にするのは怖いですよね。
でも、“わからない”からこそ、紙の上に書き出す価値があるんです。
事業計画書(収支予測)とは、簡単に言えば
『これから自分がやろうとしているお店のお金の設計図』です。
この設計図がないまま海へ出るのは、コンパスを持たずに航海に出るのと同じで、とても危険なんですよ。



最初はざっくりで構いません。
書き出すことで『見えなかったリスク』が見えてきます。
収支予測の基本は、以下の非常にシンプルな公式です。
この公式に、あなたの頭の中にあるアイデアを当てはめて
『本当に利益が出るのか?』を検証する。
それが事業計画書を作る最大の目的です。
まずはワンオペ経営の目安として、
『売上の30%以上の利益を残す』
ことを目標に計画を立ててみましょう。
収益(残るお金)= 売上 - 経費
第2章:売上予測の作り方|3つの要素を「リアルな数字」に尖らせる





売上が『客単価 × 席数 × 回転率』なのはわかったよ。
でもさ、適当に『単価1,500円で、1日3回転!』って決めちゃっていいの?
絶対そんなに上手くいかないよね?



素晴らしい気付きです。
多くの方が、事業計画書を作る際に
『全員がセットメニューを頼んでくれる』
『席が常に満席になる』という“理想の数字”を当てはめて失敗してしまいます。
売上予測を現実的で説得力のあるものにするためには、この3つの要素をプロの視点で一段深く、シビアに計算する必要があります。



事業計画書における売上予測は、希望的観測を排除することが鉄則です。
以下のステップで、それぞれの数字を『リアルな限界値』に落とし込んでいきましょう。


STEP1:メニュー開発|「客単価」は注文確率から逆算する



まずは、コンセプトに沿ったメニュー開発からスタートです。
メニューと価格を設定することで客単価を算出することができます。



客単価を出すとき、
『一番売りたいメニューの値段』をそのまま書いてはいけません。
お客様全員が一番高いメニューやドリンクを追加してくれるわけではないからです。


たとえば、ホットサンドのベースメニューが500円、追加セットが500円の場合。
悪い例: サンド(500円×2個) + 500円 = 客単価 1,500円(全員がセットを頼む前提)
良い例(プロの計算): セットを頼む人が半数(50%)だと仮定する。
1,000円 +(500円 × 50%)= リアルな客単価 1,250円



このように、
『何割の人が追加注文するか(注文確率)』
を予測に組み込むことで、売上予測の精度はグッと上がり、事業計画書としての信用度が増します。


STEP2:物件探し|「席数」は店の広さではなく「自分の限界」で決める



メニューが決まりましたら、その業態に合わせた物件を探しましょう。
まずは不動産サイトなどで「お店用の物件」がどんな条件なのか、ざっくり見ておくとイメージが湧きやすくなります。



なるほど。
良さげな物件を見つけたら、チェックするのは設備と席数だね。
ワンオペなら10坪で15席くらい作れる物件を探せばいいんでしょ?



ちょっと待ってください。
図面上で15席作れたとしても、
『あなたが1人で同時にさばける人数』は何人でしょうか?
ワンオペ飲食店最大のボトルネックは、
厨房のコンロの数と、店主の“手”の数なんです。



席数を決める際は、以下の『提供スピードの限界値』を必ず考慮してください。
コンロと調理時間の限界
1回の調理で3食しか作れず、
提供に15分かかるなら、
15人が一気に来店しても料理を出せません。
ワンオペの適正席数
メニューの調理工程にもよりますが、個人店で無理なく回せるのは「カウンター+テーブル合わせて 8〜12席」が現実的なラインです。
これ以上席を増やすと、提供遅れによるクレームが発生し、リピーターを失います。




STEP3:立地商圏分析|「回転率」はピークタイムと稼働率で削る



気になる物件が出てきたら、次は「その地域に合ったお店ができるか?」を調べる番です。
グルメサイトやGoogleマップで、同じような規模・業態のお店をチェックしてみましょう。


- 客層(サラリーマン?主婦?学生?)
- 店内の広さ(席数の参考に)
- 平均予算(メニュー価格と一致してる?)



こういった調査で得た情報をもとに、メニューや価格設定を再調整して、最初に立てた客単価や原価率の精度を高めていきましょう。
回転率を調べよう



回転率?
昔のホテルのレストランは回転してたみたいだけど、今も回ってるの?



残念ながら回転展望レストランはもう閉店してしまったみたいです。
わたしのおじいさんは観光客をそのホテルに案内していたものですが…



“回転率”とは、「1日に同じ席が何回使われるか」という意味です。
たとえば──
10席あるお店に、1日30人のお客さんが来た場合:
→ 回転率は「3.0回」になります(30人 ÷ 10席)
この数字をもとに、1日の売上がどう変わるかが見えてきます。



近くの似たような店を見て「どれくらい入ってるか」を観察すれば、
現実的な回転率のヒントが手に入りますよ。
- 混雑する時間帯は?
- 1組の滞在時間はどれくらい?
- 席はどのくらい埋まってる?



こういった情報を集めて、自分のお店の売上予測に活かしましょう。
業態によって「回転率」はこんなに違う!
| 業態 | 平均的な回転率 | 特徴 |
|---|---|---|
| ラーメン屋 | 3.0〜5.0回 | 滞在時間が短く、席の回転が早い |
| カフェ | 1.0〜2.0回 | 滞在時間が長く、回転率は低め |
| 居酒屋 | 1.5〜3.0回 | ピーク帯に集中。回転率は時間帯で変動 |
| バー | 1.0回前後 | 長時間滞在が多く、回転は低め |



え〜、回転率を調べるのって大変そうだなぁ……
店の前でずっと張り込むの?ストーカーみたいにならない?



そんなに構えなくても大丈夫です。
ざっくりでいいのです。
近所のお店にランチ時や夜に何度か行ってみて、どれくらいお客さんが入れ替わってるかを見れば、だいたいの回転率はつかめます。
- 11:30に満席、その後12:30にまた満席なら「約2回転」
- 混み始めてから満席までのスピード
- 1人あたりの滞在時間の体感(例:30分 or 90分)



グルメサイトや口コミでも「落ち着いた雰囲気」「すぐ満席になる」などの記載があります。
そういった定性的なヒントも、十分役立ちますよ。


第3章:経費予測の作り方|ワンオペの罠「家賃の逆算」





では次は経費の予測です。
ざっくりでいいので、あなたのお店でかかる“毎月の出費”を見積もっていきましょう。



FLRとは、飲食店の三大コストの頭文字です。
F:Food(材料費) L:Labor(人件費) R:Rent(家賃)
この3つで、ほとんどの経費が構成されます。



材料費と家賃は、さっきのメニュー開発と物件探しのとこで出てきたやつだよね。
後は人件費はひとりでやるからかからないね。
その他の経費はどうやって出すの?



その他の経費は売上に対する割合からおおよそ算出するのがよいでしょう。
| 経費項目 | 売上に対する目安 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 水道光熱費 | 約8% | 厨房機器・冷暖房・照明などの使用が多く、店舗用契約で基本料金も高いため。売上に比例して変動しやすい。 |
| 広告・交際費 | 約10% | 開業初期の集客(チラシ・SNS・グルメサイト掲載)や、リピーター獲得のためのドリンクサービス等に必要。 |
| 消耗品・備品費 | 約5% | ナプキン・洗剤・レジロールなど、日常的に使用する細かな消耗品が多く、地味にコストがかかる。 |



これらの経費は売上に応じて“じわじわ効いてくるコスト”です。
利益の計算をする前に、あらかじめ見込んでおきましょう。
経費の定番:売上の家賃は10%、原価率30%
家賃は売上の10%以内



ワンオペ最大の罠は『家賃(固定費)』にあります。
人件費がかからない分、良い立地の少し高い物件を借りても大丈夫だろう、と考えてしまう人が非常に多いのですが、それは大変危険です。



ワンオペ飲食店の経費予測において、
家賃は『想定売上の10%以内』に収めるのが絶対ルールです。これをオーバーすると、事業は構造的に立ち行かなくなります。
家賃は、売上がゼロの日でも毎月必ず出ていく「固定費」です。
第2章で、ワンオペの限界は「自分がさばける席数と回転率」で決まると説明しましたね。
家賃15万円の物件を借りた場合:
家賃を10%に収めるためには、「月に150万円の売上」が必要になります。
月に25日営業するなら、1日あたり6万円の売上です。
材料費は売上の30%以内



次に、そのメニューを提供するためにかかる材料費を見積もってみましょう。



『せっかくだから良い食材を使いたい』
と原価率が高くなってしまうのも問題ですが、本当に恐ろしいのは原価率の高騰そのものではありません。
初めて開業する方が陥る最大の罠は、以下の2つです。
すべてのメニューをきっちり原価30%にする必要はありません。
飲食店には「集客メニュー」と「儲かるメニュー」の役割分担があります。
- 集客メニュー(フロントエンド): 原価率40%でも、お客さんを呼ぶための看板商品。
- 儲かるメニュー: 原価率10%のドリンクやセットのデザートで利益を回収する。
『どの商品が売れれば利益が残るのか』を把握していなければ、看板商品ばかりがバカ売れして、毎日忙しいのに手元には一銭も残らない……という悲惨な状態に陥ってしまいます。


もう一つの罠は、レシピが定まっておらず、原価率が日によってブレてしまうことです。
- 「今日は常連さんだからお肉を多めにサービスしよう」
- 「ソースの量がいつも目分量でバラバラ」
こうした日々の小さな『ブレ』が、月末になると数万円単位のズレとして跳ね返ってきます。商品が売れてもなぜか利益が残らない最大の原因は、この『原価率が安定していないこと』にあるのです。
だからこそ、事業計画書の段階で**『このメニューは原価〇円で作る』
という明確なルール(レシピと計量)を決め、数字のブレをなくすことが、ワンオペ経営を生き残らせる絶対条件なんです。


現実とのギャップ



客単価1,250円の場合、1日に48人(6万円 ÷ 1,250円)接客する必要があります。
10席のお店なら、毎日約5回転。ワンオペで、毎日これだけの人数をさばき続ける体力があなたにありますか?



ひえ~、ワンオペなら料理を作るだけじゃなくてお会計も後片付けも必要だよね?大変だ~



「つまり、経費予測(家賃)が高すぎると、必然的に『ワンオペでは不可能な売上目標』を立てざるを得なくなります。
だからこそ、まずはエクセルを使って、自分が無理なく出せる売上から、支払える家賃の上限を『逆算』することが重要なんです。」
第4章:エクセルでかんたん!収支シミュレーションの使い方





理屈はすごくよくわかった! でも、これを全部自分で計算してまとめるのは、正直言って自信がない……。計算ミスしそうだし、なんだか面倒くさくなってきた……



数字が苦手な方にとって、電卓を叩きながら計画書を作るのは本当に骨の折れる作業ですよね。でも安心してください。
あなたがやるべきことは『計算』ではなく
『お店の構想を練ること』です。
面倒な計算は、すべてツールに任せてしまいましょう!



当事務所で実際に融資サポート等で使用している
『収支予測シミュレーション(無料エクセル)』を配布します。
あなたが第1章・第2章で考えた数字を入力するだけで、事業計画書に必要なデータが自動で完成します。
無料エクセルで作る!収支予測の5ステップ


まずはエクセル左側の表に、あなたが考えたメニューを入力します。
「フード」「ドリンク」「サイド」に分け、それぞれの「価格」と「原価率」を入力してください。
まだ正確な原価がわからなければ、ひとまず基本の「30%」などで設定しておきましょう。
中央下部の「物件探し」の表に、想定している店舗の情報を入力します。
家賃や人件費などの経費項目と、右側にある「広さ(坪)」「営業時間」「営業日数」「席数」を入力します。まずは、目標とする売上に届くように「回転率」を仮置きしてみましょう。
中央の「メニュー開発・商圏分析」の表で、お店がオープンした後の「リアルなお客さん」を3パターン(A・B・C)想像して入力します。
- 例:「お客さんC:学生、15:00来店、60分滞在」 その人物になりきって、STEP1で作ったメニューの『No』の数字をオーダー欄に入力してください。自動でそのお客さんの「お会計額」が計算されます。
STEP3で設定した3人のペルソナから、「平均客単価」と「平均原価率」が算出されます。
そして、画面の
一番上にある「収支予測結果」を見てください!
ペルソナの客単価と、STEP2で入力した席数・回転率などがすべて掛け合わされ、「月間売上」「月間経費」「月間利益」「利益率」が一瞬で弾き出されます。
最後に、右側に自動作成される「損益分岐点グラフ」を確認します。
ここで見るべきは、
- 「青と赤の線が交わっている点(損益分岐点売上高)」
- 「あなたが予測した目標売上」の距離(余裕)
です。
「黒字なら安全」ではありません。
損益分岐点は、“赤字に転落する一歩手前のライン”です。
たとえば分岐点が月80万円、予測売上が90万円。差は10万円。
天候・客足・原価高騰。
一つ崩れれば即赤字。
銀行員が見るのはここです。
分岐点と予測売上に“十分な余裕”があるか。
近すぎるなら危険。
その場合は、
- 家賃を下げる
- 原価率を見直す
構造をやり直してください。
計画は「気合」では守れません。


▼ 面倒な計算はこれで解決!今すぐダウンロード ▼
\まずは「客単価・席数・営業日数」だけ入れてみてください。/
第5章:銀行員はエクセルの「どこ」を見る?融資落ちを防ぐ絶対条件





なんだかリアルな数字を出すのが怖くなってきた……。
でも、エクセルを使って赤字にならない計算結果が出せれば、日本政策金融公庫の融資の審査は通るんだよね?



エクセルでキレイな数字を作ることは、実は誰にでもできます。
でも、公庫の担当者が本当に見ているのは
『計算の答え』ではなく、
『なぜその数字になるのか?』
という裏付け(客観的根拠)なんです。



日本政策金融公庫の審査で最も厳しく突っ込まれるポイントは以下の2点です。
融資担当者は『熱意』ではなく『データ』にお金を貸します。
数字のつじつま合わせではなく、
第2章でお伝えした『近隣調査』や『商圏分析』の結果を、計画書にしっかり反映させることが絶対条件です。
- 『客単価1,500円』の根拠は? → 周辺の競合店の相場と合っているか?
- 『1日30人来店』の根拠は? → その場所の通行量は? ターゲット層は本当にいるのか?
まとめ:頭の中のアイデアを「説得力のある数字」に変えよう



お疲れ様でした!『客単価・席数・回転率』で売上の限界を知り、
『家賃の逆算』で経費を予測する。
このリアルな数字をエクセルで出すことで、あなたの頭の中にあったフワッとした理想が、地に足のついた『現実的な計画』へと変わりました。



まずはエクセルをダウンロードして、『客単価』と『席数』だけでも入力してみるよ! 自動で利益の計算が出るなら、なんだか楽しくなってきそう!



第0章でお伝えした通り、経営は『計画が9割』です。
収支予測のエクセルで弾き出した数字は、いわば羅針盤の**『動力源』に過ぎません。
次はこの数字を根拠にして、融資担当者を納得させ、あなた自身のビジネスを成功へ導く
『事業計画書(創業計画書)という本格的な地図』
を作成していくフェーズに入ります。





