甲斐承太郎出したい料理を書き出したら、15品になっちゃった。
カレーも唐揚げも焼きそばも、全部ボクの自信作なんだ。
でも、ひとりのお店でこれ全部、回せるのかな?



どれも出したくなるお気持ちは分かります。
ただ、ひとりのお店で苦しくなるのは、料理の腕よりも、注文や洗い物が一度に押し寄せる時間です。
品数を決めるときは、作る手間だけでなく、仕込みと片付けまで見ておきたいですね。
- ひとりのお店で手が止まる原因と、メニューとの関係
- 品数を増やさずに選ぶ楽しさを出す、2つのメニューの組み方
- 決めたメニューで、生活費まで残るかの確かめ方



メニューは、共通の材料と仕込みで出せる範囲に絞ります。
看板料理をひとつ決めて、トッピングかアレンジで選ぶ幅を出す形です。
品数を増やすのは、片付けまで回せて生活費が残ると確かめてからにしてください。
第1章|ワンオペで手が止まるのは、品数より「重なる仕事」が原因





片付けまで見るって、どういうこと?
ひとりのお店なら、料理を作るのがいちばん大変なんじゃないの?



では、こんな場面を想像してみてください。
熱いスープカレーを運んでいる途中で、追加の注文に呼ばれる。
そこへ別のお客様がお会計に立つ。



えっと……カレーを置いて、注文を聞いて、レジに……あっ、その間にフライヤーの唐揚げが!



熱い料理を持ったまま、レジには向かえませんね。
まずは料理を安全に届けて、ほかのお客様には順番に伺うと伝えます。
ただ、毎回これが続くなら、速く動くだけでは苦しくなります。
重なって困る仕事を、前もって減らしておく必要がありますね。
小さな店でも、仕事は同時にやってくる
席数が少なくても、調理・注文・会計のタイミングは重なります。自分の店で起こりそうな場面と、その対策を組み合わせて考えましょう。
| 手が止まる場面 | 店づくりで減らせる仕事 |
|---|---|
| 調理中に水のおかわりを頼まれる | 水をセルフサービスにして、客席へ運ぶ回数を減らす |
| 料理を運ぶたびに厨房を離れる | カウンター越しに渡せる配置にする |
| 使う道具を取りに何度も移動する | よく使う器具と食材を、手の届く範囲にまとめる |
| 注文のたびに別の材料や器具を出す | 共通の仕込みを使うメニューを組み合わせる |
| 調理と会計が何度も重なる | 前会計など、会計のタイミングをまとめる方法を検討する |
厨房の配置は「失敗しない!10坪飲食店レイアウト設計術」、会計の方法は「ワンオペ飲食店にキャッシュレス決済が必要か判断する方法」で詳しく解説しています。



ボクが素早く動く練習をするより、そもそも呼ばれる用事を減らすんだ。
水を運ばなくて済めば、その間に料理を仕上げられるもんね。



ええ。
お客様にも、水の場所や注文の仕方がすぐ分かるようにしておきましょう。
セルフサービスにしても、そのたびに説明が必要では、手間が残ってしまいますからね。
閉店後まで含めて、ひとりで続けられるか



営業時間中に回せても、閉店後に仕事が積み上がるなら見直しが必要です。
仕入れ、仕込み、洗い物、掃除まで終えて、一日の仕事です。
確認したいのは、次の3つです。
確認したいのは、次の3つです。
開店前


買い出しと仕込みを終えて、余裕を持ってお客様を迎えられるか
営業中


注文が重なっても、安全に調理し、待つお客様へ声をかけられるか
閉店後


片付けと翌日の準備が終わり、食事や睡眠の時間を取れるか



メニューを一品増やすときも、作る時間だけでなく、仕込みや洗い物まで見てみてください。
同じ材料や器具を使える料理なら、仕事をあまり増やさずに選ぶ幅を広げられます。
第2章|メニューは「一品+トッピング」か「基本+アレンジ」で組む





同じ材料で選ぶ幅を広げる?
カレーと唐揚げと焼きそばじゃ、材料がバラバラだよ。



そこで、発想を逆にします。
料理を並べてから共通点を探すのではなく、先に土台をひとつ決めて、そこから枝分かれさせるんです。
ワンオペのお店でよく使われる形は、2つあります。
| / | 一品+トッピング | 基本+アレンジ |
|---|---|---|
| 組み方 | 看板料理は1つ。のせる具を選んでもらう | 基本の料理を1つ仕込み、仕上げを変えて別メニューにする |
| 向いている料理 | スープカレー、ラーメン、丼もの | 唐揚げ、焼きそば、粉もの |
| 気をつけること | 具を増やしすぎると、冷蔵庫と器が足りなくなる | 仕上げに手間がかかると、品数分の工程が戻ってくる |
一品+トッピング:看板料理は1つに決める



看板の一品が決まっていれば、仕込むのはその料理と、のせる具が中心です。
注文が入ってからの作業も、盛り付けて具をのせるところまでで済みます。
トッピングを有料にすれば、品数を増やさずに客単価を上げる手段にもなりますね。



チキンを選んで、ブロッコリーとチーズを足して……自分だけの一杯になるんだね。
写真を撮りたくなるようなメニューも、別に作ったほうがいいかな?



映える工夫も、看板の一品に集めましょう。
ひとりのお店では、品数を増やすより、ひと皿の見た目を磨くほうが続けやすいですよ。



トッピングは、仕込んでおけば盛るだけで出せるものに限ってください。
注文のたびに焼く・揚げる具を増やすと、一品に絞った意味がなくなります。
基本+アレンジ:同じ仕込みから別の料理を出す



でも、唐揚げみたいに、具をのせるのが合わない料理もあるよね?



その場合は、仕上げで変化をつけます。
揚げた唐揚げは同じでも、かけるソースが変われば別の料理になります。
| 基本の仕込み | アレンジメニューの例 |
|---|---|
| プレーンの唐揚げ | 油淋鶏、タルタルがけ、おろしポン酢 |
| 焼きそばの麺と具材 | ソース焼きそば、塩焼きそば、オムそば、焼きそば丼 |



アレンジは、仕上げの一手間で出せる範囲にしてください。
ソースごとに別の仕込みが必要になると、品数を絞った効果がなくなります。
変化は「期間限定」で出す



品数を絞ったら、常連さんに飽きられないかな?



そのときは、いつものメニューを増やさずに、期間限定の一品を入れ替えます。
季節のトッピングや今月のソースなら、ふだんの仕込みに少し足すだけで済みます。
終わる日が決まっているので、手が回らなければ次から出さなければいいんです。
第3章|出したい料理を書き出して、共通の材料と仕込みでまとめる



土台を決めるのは分かったよ。
でも、ボクの15品から、どれを残せばいいの?



書き出した料理を、材料と仕込みで並べてみましょう。
スープカレーのお店を例にします。
- 出したい料理を、思いつくまま書き出す
- それぞれに使う材料と仕込み、器や道具を書く
- ほかの料理と共通しないものに印をつける
| 出したい料理 | ほかと共通で使える仕込み | その料理だけに必要なもの |
|---|---|---|
| チキンスープカレー | スープ、ライス、素揚げ野菜 | 骨付きチキンの煮込み |
| 野菜スープカレー | スープ、ライス、素揚げ野菜 | なし |
| ザンギ | 揚げ油(素揚げ野菜と共用)、鶏肉 | 下味の漬け込み、盛る皿 |
| カレー焼きそば | スープ(ソースに使う) | 麺、鉄板、専用の皿 |
| ハンバーグ | なし | ひき肉の仕込み、焼く工程、鉄皿 |
| パスタ | なし | 麺、ソース、ゆで釜、専用の皿 |



こうして並べると、見えてきますね。
チキンと野菜のスープカレーは、ほとんど同じ仕込みで出せます。
ザンギは揚げ油も鶏肉も共通なので、単品にせず、トッピングに回せます。
そうすれば皿も増えません。
一方で、焼きそば、ハンバーグ、パスタは、その料理のためだけの材料と道具が増えます。
洗い物も、皿や鉄板の分だけ増えます。



じゃあ、その3つは全部やめるしかないの?
ハンバーグ、自信あったのに……。



やめるとは限りません。
外した料理は、次の3つのどれかに振り分けます。
| 外した料理 | 生かし方 | 理由 |
|---|---|---|
| ハンバーグ | トッピングに変える | 仕込みで焼いておけば、温めてのせるだけで出せる。鉄皿もいらない |
| カレー焼きそば | 期間限定にする | 鉄板の作業が増えるので、常に出すメニューには向かない |
| パスタ | やめる | 共通の仕込みも道具もなく、生かす方法がない |



確かめる順番は、まずトッピングに変えられるか、次に期間限定なら出せるか、です。
どちらも難しい料理は、やめてください。



15品が、スープカレー2種類とトッピングにまとまっちゃった。
ハンバーグはトッピングで生き残ったぞ!
材料がそろうと、仕入れも小さく回る



使う材料が減ったら、仕入れも楽になるのかな?



ええ。
同じ食材をいくつもの料理で使えば、使い切りやすくなり、余らせて捨てる量も減ります。
小さなお店はまとめて大量に仕入れられないので、少量でも納品してくれる仕入れ先を見つけておくことが大切です。



地元の農家などと直接取引できれば、旬の野菜をメニューの売りにできます。
ただし、天候で入荷量が変わります。
看板料理に欠かせない材料は、安定して届く仕入れ先も確保してください。


第4章|そのメニューで、生活費まで残るか



メニューも決まったし、あとはお客さんに来てもらうだけだね!



その前に、もうひとつ確かめることがあります。
店の家賃と仕入れ代を払えても、自分の生活費が残らなければ続けられません。
ひとりで出せる量と、暮らしに必要なお金。
この両方が合う計画にします。



アルバイト代がかからないから、その分はボクの生活費にできると思ってたよ。
お店の支払い以外にも、残しておくお金があるんだね。



ええ。
冷蔵庫が故障したときや、お客様が少ない月にも支払いはあります。
今月の支払いを終えて残ったお金を、全部使ってよいとは限りません。
売上の使い道を、先に整理しておきましょう。
売上から、店と暮らしの両方を支える
ここでは細かな計算より、確保するお金の種類を押さえます。
| 確保するお金 | 主な使い道 |
|---|---|
| 営業を続けるお金 | 食材、店の家賃、光熱費、消耗品など |
| 支払いに備えるお金 | 借入金の返済、税金など |
| 店に残しておくお金 | 設備の修理、売上が少ない時期への備え |
| 自分が暮らすお金 | 自宅の住居費、食費など |



ひとりで営む店では、ご自分の働きに対するお金も売上から確保します。
生活費を毎月持ち出さないと続かないなら、営業が回っていても、計画を見直す必要がありますね。
客数を増やせば解決するとは限らない



足りないなら、もっと売らないとね。
ランチのお客さんを増やして、どんどん作れば……あれ、また厨房から出られなくなりそうだ。



そこで、ここまで考えたメニューや動線が関わってきます。
一日を通して注文が入るのか、昼の短い時間に集中するのか。
同じ客数でも、ひとりで対応できるかは変わりますね。
計画を見直すときは、自分の店がどの状態なのかを確かめます。
| 今の状態 | 見直すところ |
|---|---|
| 無理なく回せるが、生活費が残らない | 販売価格、材料費、家賃などの負担 |
| 必要な売上を作ろうとすると、提供が追いつかない | 調理工程、メニューの組み合わせ、注文の受け方 |
| 回せる量で、生活費も確保できる | その人数のお客様に来てもらえる根拠 |
追加の一品は、売上と仕事の両方を増やす



それなら、トッピングを足してもらったり、小鉢や飲み物も頼んでもらえたりするといいね。
お客さんの人数を増やさなくても、売上を増やせるし。



お客様が一緒に頼みたいと思う組み合わせなら、候補になりますね。
前の章のように、共通の仕込みから出せるものは、その一例です。
ただ、器が増えれば、下げる食器や洗い物も増えます。
飲み物も、作って運ぶところまで考えましょう。



追加した商品の材料費と作業も確認してください。
売上が増えても、残るお金が少なく、看板料理の提供まで遅れるなら、組み合わせを見直します。
トッピングや小鉢の値段を材料費から決める方法は、「エクセルで簡単!初心者でもマスターできる原価計算の方法を解説」で解説しています。
無理なく出せるメニューが見えてきたら、次は飲食店の収支計画書で、必要な売上と手元に残るお金を具体的にしましょう。
第5章|仕込みの量から、休みと急な休業への備えを決める





定休日なのに、買い出し、仕込み、帳簿の整理で一日が終わる。
お客様を入れていない日でも、仕事をしていれば休みにはなりません。
営業日を決めるときは、店を開ける時間と、自分が働く時間を分けて考えます。
買い出しや仕込みの量は、メニューで決まります。
ここまでメニューを絞ってきたのは、休む時間を作るためでもあるんですよ。
一週間の予定に、営業以外の仕事も入れる



最初はできるだけ店を開けたいな。
お客さんが来ない時間に休めば、定休日は少なくても大丈夫かな?



その時間に座ることはできても、いつ注文が入るか分かりませんね。
食事や外出の予定も立てにくくなります。
まずは一週間の予定に、営業以外の仕事も書き込んでみましょう。
開店前


買い出し、仕込み、店内の準備
閉店後


洗い物、清掃、売上確認、発注
週のどこかで


帳簿整理、設備の手入れ、メニューの見直し



これを全部、定休日に入れたら……お店が休みなだけで、ボクは出勤だね。



ええ。
そこで、配達を使って買い出しを減らしたり、前の章のように仕込みを共通にしたりする工夫が役立ちます。
それでも休む時間が残らないなら、営業時間やメニューの数を調整しましょう。
余った時間に休もうとすると、仕事で埋まりやすいですからね。
急に休む日に、何をするか決めておく



ひとりで営む店では、自分が動けなければ営業も止まります。
体調が悪い日に一から考えずに済むよう、休業時の手順と連絡先をまとめておいてください。
| やること | 前もって準備しておくこと |
|---|---|
| 予約のお客様に連絡する | 予約を確認する場所と、連絡方法を決めておく |
| 休業を知らせる | 店頭や普段使っている発信先に、休業と再開予定を案内する。再開日が決まらなければ、未定と伝える |
| 納品の変更を連絡する | 仕入れ先の連絡先と、注文を止められる締切を控えておく |
| 再開前に在庫を確認する | 仕込み済みのものも含め、食材の状態を確認してから準備を始める |
休んでも続く支払いと、頼れる相手を確認する



連絡する順番が決まっていれば、慌てずに済みそう。
でも、お店を休んでも家賃はかかるんだよね。



そうですね。
前の章で確認した店の支払いと生活費を、売上が減った月にも払えるか見ておきましょう。
毎日休まず営業できるとは限りません。
その前提で、お金を使い切らないようにしておきたいですね。
設備の修理先なども、困る前に控えておくと、すぐに動けます。
ひとりで営業することと、すべてを自分で解決することは別ですよ。
- 冷蔵庫や調理機器が故障したときの修理先
- 納品や注文の変更を相談できる仕入れ先
- 帳簿や経営上の疑問を相談できる相手



店を開ける準備だけじゃ足りないんだね。
一週間の予定に休みを入れて、急に閉める日の連絡先もまとめておくよ。


まとめ



今回は、ひとりのお店で回せるメニューの組み方を見てきました。
品数を決める基準は、作れるかどうかより、片付けまで回せるか、そして暮らしが成り立つかです。
- ワンオペで手が止まる原因は、品数より、調理・注文・会計が重なること。呼ばれる用事を店づくりで減らす
- メニューは「一品+トッピング」か「基本+アレンジ」で組む。変化は期間限定で出す
- 出したい料理を材料・仕込み・器で並べる。共通しない料理は「トッピングに変える → 期間限定にする → やめる」の順で振り分ける
- 売上から、店の支払いと生活費の両方が残るか確かめる。追加の一品は、材料費と作業も見る
- 仕込みの量から休みを決める。急な休業の手順と連絡先をまとめておく



メニューは、共通の材料と仕込みで出せる範囲に絞ってください。
片付けまで回せて生活費も残るなら、その品数で開業できます。
どちらかが足りないなら、品数を増やすのではなく、組み合わせを見直します。



15品がスープカレー2種類とトッピングになったけど、お店としてはむしろ強くなった気がするよ。
まずはトッピングの値段を決めるために、ハンバーグとザンギの原価を計算してみる!





