飲食店の立地調査は何を見る?家賃の安さで決める前のチェックポイント

甲斐承太郎

家賃の安い物件を見つけたんだけど、大通りから少し入るんだ。
これって『穴場』なのか『誰も来ない場所』なのか、ボクには分からないよ。
車で来てもらうなら大丈夫?
契約する前に何を見ればいいの?

アカガネ所長

隠れ家のお店、憧れますね。
ただ、隠れたままでは困ります。
迷っているのは、家賃の安さと引き換えに、どこまで立地を妥協してよいか、ということですね。
お客様が店を知り、到着するまでをたどると、判断しやすくなります。

この記事でわかること
  • 郊外・住宅街・路地裏の安い物件で、最初に確認したい3つの条件
  • 大通りからの曲がりやすさ、駐車場、看板・入口の見え方を確かめる方法
  • 工夫で補える立地の弱点と、家賃が安くても候補から外したい条件の見分け方
シマナガ

選ぶ基準は、駅に近いかではなく、営業する時間に狙うお客様がいて、その人がお店を見つけ、無理なく入店できるかです。
大通りから離れているだけで、候補から外す必要はありません。
まずは次の3点です。

この3点に具体的な見通しがあれば候補に残し、次に売上と費用を確かめます。駐車場所が確保できない、狙う時間にお客様がいないなど、対処できない問題があれば、安さだけでは選びません。

  • 来る理由があるか
    • 狙うお客様が利用する時間と、通りを外れてでも食べたい料理・利用目的があるか。
  • たどり着いて入れるか
    • 曲がる場所と入口が分かるか。車なら無理なく出入りでき、駐車できるか。
  • 知ってもらう方法があるか
    • 通りからの案内や検索・紹介などで、開業時から店の存在を伝えられるか。

著者紹介

こやけ行政書士事務所
代表行政書士 田川 英幸

行政書士(北海道行政書士会所属)
日商簿記2級/2013年度行政書士試験合格

運送業・法人営業などの実務経験を経て、こやけ行政書士事務所を開業。
飲食店開業・独立開業をするならまずは無料相談からはじめませんか?

目次

第1章|駅前・住宅街・路地裏、どこなら自分のお客様が来る?

甲斐承太郎

路地裏でも繁盛しているお店はあるよね。
おいしい料理を出せば何とかなるんじゃない?

アカガネ所長

おいしい料理を目当てに、路地裏まで来てもらえるお店。
目指したいですね。
ただ、そのお客様も、最初は何かのきっかけでお店を知ったはずです。
立地を選ぶときは、『誰が、いつ、何のために来るお店なのか』を先に考えましょう。
同じ場所でも、想定する使われ方によって向き・不向きが変わります。

会社員のランチなら、職場から昼休みに往復できる場所か。
休日の家族客なら、車で訪れる理由と経路があるか。同じ物件でも、利用場面によって判断が変わります。

通りがかりのお客様か、お店を目当てに来るお客様か

路地裏や大通りから離れた店では、通りがかりの来店だけを当てにできません。次の二つを分けて考えます。

「おいしければ口コミで広まるはず」で止めず、まだ誰にも知られていない開業時に、最初のお客様へどう知らせるかまで用意しましょう。

シマナガ

駅前でも、お客様が使う道から外れていれば、通りがかりの来店は期待しにくくなります。
路地裏でも、お店を知るきっかけと訪れる理由があれば、候補には残せます。
まずは『誰が・いつ・何のために来るか』を一文にして、その人の行動に合う場所を探してください。

第2章|立地調査は「お客様が来る道」を歩いて確かめる

甲斐承太郎

駅から徒歩5分の物件を見てきたよ。
入口が見つからなくて一周しちゃったけど……ボクの方向音痴は調査結果から除外していい?

アカガネ所長

私も初めての場所では迷うことがありますから、お気持ちは分かります。
でも、その一周は大事な調査結果ですよ。
立地調査では、物件の前だけを見るのではなく、お客様が来る方向から歩いて、店を見つけて入るまでを確かめましょう。
地図上では近くても、実際には遠回りが必要だったり、入口が反対側だったりすることがあります。

駅からの最短経路より、お客様が普段使う道を見る

シマナガ

人が移動するときに通る経路を、ここでは「動線」と呼びます。
駅と職場、住宅とスーパーなどを結ぶ道が動線です。
駅から近くても、お客様が別の出口へ向かうなら見つけてもらいにくくなります。
狙うお客様の出発点から歩き、横断歩道の位置や階段、入口までの遠回りを確認しましょう。

見つけてもらう工夫は、契約前に実現できるか確認する

アカガネ所長

建物が見えても、料理・価格・入口が分からなければ入店を迷います。看板やメニューをどこに出せるか、貸主に確認しましょう。
「看板を出せば解決」と思って契約したら、設置できなかった。 これでは困ります。見せ方の工夫は、設置できることが前提です。

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郊外で大通りから少し入る物件は、車で来る道を確かめる

甲斐承太郎

郊外の候補は、大通りから曲がればすぐなんだ。
歩くと少し遠いけど、車なら平気じゃない?
駐車場もあるし!

アカガネ所長

車なら選べる範囲は広がりますね。
ただ、『曲がればすぐ』と『曲がりやすい』は別です。
大通りからの距離だけでなく、お客様が来る方向から、駐車して帰るまでを確認しましょう。

シマナガ

反対方向からは中央分離帯で曲がれない、営業時間には右折しにくい、といった違いがあります。
来店しそうな住宅地や買い物先から経路を確かめます。

最初の現地確認は、次の3点に絞りましょう。

車での来客のチェックポイント
  1. 曲がる場所が分かり、無理なく入れるか。
    1. 入口を通り過ぎずに曲がれ、帰りも出やすいかを見ます。
  2. お客様用の駐車場所を確保できるか。
    1. 客用の区画・台数・代替先を確認。近隣施設の駐車場を無断で当てにしません。
  3. 通りから見えなくても、店と駐車場へ案内できるか。
    1. 看板の設置可否と、地図・入口写真での案内方法を確かめます。

駐車場は、客用に使える台数と停めやすさまで確認します。

アカガネ所長

『大通りから何メートルなら大丈夫』と一律には決められません。
曲がれる・停められる・案内できる。
この3点を確認し、来店する理由もあれば候補に残します。
大通りを通る車の数を、そのまま自分のお店の見込み客には数えないでください。
雪のある地域では、冬の除雪や駐車スペースも確認します。現地で確かめられない季節の条件は、未確認として残しましょう。

第3章|平日・休日、昼・夜で変わる客層と競合店を見る

甲斐承太郎

土曜の午後、近くのカフェが混んでたよ。
ボクの平日ランチも期待できそう!
調査のついでにケーキも食べてきた。

アカガネ所長

ケーキまで。
周辺のお店の調査も、楽しんで進められていますね。
ただ、土曜日の午後にカフェを利用する人と、平日の昼にランチを食べる人は、同じとは限りません。
次は、自分のお店が営業する曜日と時間帯に、どんな人がいて、周辺のお店をどう利用しているか確かめましょう。

候補に残せそうなら、営業したい時間に一度見に行く

まずは平日のランチなど、自分が売上を作りたい時間を選びます。そこで次の点を見て、判断に足りない部分だけ別の曜日・時間帯に確認しましょう。

とき観察すること判断にどう使うか
平日と休日会社員・買い物客・家族連れなど、人の構成や周辺店の営業状況平日中心か、休日にも利用を見込むかを考える
昼と夜人の流れ、営業している店、食事や飲酒での利用ランチと夜営業の、どちらが自店に合うか考える
狙う時間帯の前後来店が短時間に集中するか、時間をずらしても続くか営業時間と、一人で対応できる注文の集中度を考える
普段と条件が違う日雨・雪、イベント、学校の休暇などその日に見たにぎわいを、普段の状態と混同しない

「休日は人が少ない」と分かっても、平日の会社員向けに営業するなら、それだけで候補から外す必要はありません。反対に、休日の家族客を狙うのに、周辺施設も飲食店も閉まっているなら、休日に訪れる理由をもう少し調べたいところです。
調査メモには、日時・天気・周辺のイベントも一緒に残します。お祭りの日の人通りを、いつもの週末として扱わないためです。

客層は、見た目だけで決めつけない

シマナガ

通行人の年齢や職業、使える金額を、外見だけで正確に判断することはできません。
例えば、スーツ姿の人が多くても、その場所で昼食を取るとは限りません。
駅へ向かう途中かもしれませんし、職場に食堂があるかもしれません。
そこで、「どんな人に見えるか」に加えて、「実際に何をしているか」を見ます。

近くの飲食店に入るのか、弁当を買って戻るのか、店頭のメニューを見て通り過ぎるのか。観察した行動と、自分の推測を分けて記録すると、思い込みを減らせます。

競合が多い場所と、競合がない場所。どちらが安心?

アカガネ所長

競合店が多いと不安になりますが、飲食店が集まり、実際に利用されていることは、その時間帯に外食需要があると考える材料にもなります。

ただし、近隣店が繁盛しているから、自分のお店にも同じようにお客様が来るとは限りません。
次のように、利用され方まで見てみましょう。

観察すること自分のお店と照らし合わせること
料理と価格帯狙うお客様が、どんな食事をいくらで選んでいるか
店内飲食と持ち帰りゆっくり食べたい需要か、短時間で済ませたい需要か
混む時間と注文の集中自分の提供方法でも、その使われ方に対応できるか
お客様が店を選ぶ理由近さ・速さ・価格・料理などで、自店が選ばれる余地はあるか

競合にはコンビニの弁当も含まれます。飲食店が少なくても、需要自体が少ない可能性があるため「穴場」とは断定できません。見た目で客層を決めず、実際に買う行動を見ましょう。

シマナガ

一度見たにぎわいを、毎日の需要として扱わないでください。
自分が営業したい時間に、誰が、何を買い、どこで食べているかを確認します。
競合店の数だけでなく、自分のお店が選ばれる理由まで考えて、候補を残しましょう。

第4章|家賃が安ければ選んでいい?妥協できる条件を見極める

甲斐承太郎

全部そろった物件を待ってたら、ボクがおじいちゃんになっちゃうよ。
家賃が安いところを選んで、あとは頑張る、じゃダメかな?

アカガネ所長

今の計画を前に進めたいですね。
妥協するなら、弱点を補う方法と費用まで確認して選びましょう。
自分では変えにくい条件ほど、お客様の来店を妨げないか慎重に見ます。

気になる条件補う方法の候補候補に残す前に確かめること
通りから店が見えにくい通り沿いの案内や看板で存在を知らせる実際に設置でき、歩く方向から見えるか
郊外で大通りから離れている曲がる場所と駐車場を案内し、目的来店につなげる実際の来店方向から無理なく曲がれ、客用駐車場を確保できるか
狙う時間に対象のお客様が少ない営業時間・メニュー・対象客を見直す変更しても、自分が続けたい店として成り立つか
看板の内容は自分で工夫できますが、横断歩道の位置や周辺の人の流れは、自分の都合では変えられません。

家賃が安くなっても、ほかの出費が増えたら意味がない?

甲斐承太郎

家賃が浮いた分を広告に回せば、お客さんも呼べるんじゃない?
……あれ、看板代に駐車場代もかかるのか。浮いたお金、もう着地しそうだな。

アカガネ所長

着地する前に、行き先を確かめたいですね。家賃が安くなるメリットはありますが、その場所で営業するために増える費用と、合わせて比べましょう。
看板や入口を整える初期費用は開業資金に、広告費や駐車場代など継続する支出は毎月の収支計画に入れます。設置できると確認できたら、見積もりを取り、予算内で実行できるかを確かめましょう。
ただし、家賃の差額を広告に回しても、同じ人数のお客様が来るとは限りません。ワンオペなら、情報発信を仕込み・接客と両立できるかも大切です。

シマナガ

妥協してよいのは、弱点と対処方法を理解したうえで、引き受けられる条件です。
『安いから』『開業後に頑張るから』だけでは、判断の根拠になりません。
補う費用と手間まで整理し、売上予測と収支計画で成り立つか確かめてください。

第5章|調査結果を比較して、売上予測へ進める候補を残す

甲斐承太郎

調査メモを見返すと、全部に『よさそう』って書いてある。
ボク、それぞれの物件を好きになって帰ってきただけかも……。

アカガネ所長

街のよさに気付けたんですね。
次は、見た事実と期待を分けましょう。
ここで契約先まで決める必要はありません。
判断できない場所は保留にして構いません。

「事実・判断・未確認」を一つずつ書く

調査メモは、次のように分けるだけでも思い込みを減らせます。

事実

平日の昼、周辺の職場から出てきた人が近隣店へ入っていた。

判断

会社員のランチ需要はありそう。ただし、自店にも来るとは限らない。

未確認

自店で予定する価格帯の食事が選ばれているか。

未確認の欄から、次に調べることを一つ選びます。空欄を期待で埋める必要はありません。

候補は「残す・保留・外す」に分ける

判断どのような状態か次の行動
候補に残す狙うお客様の利用場面が確認でき、来店経路や弱点への対処にも見通しがある来店人数と売上を見積もる
保留する可能性はあるが、重要な条件が未確認曜日を変えて訪問する、貸主に確認するなど、追加調査する
候補から外す来店を妨げる大きな条件があり、対処や営業計画の変更も難しい別の候補を探す

候補に残せても、必要な売上が確保できると決まったわけではありません。次に来店人数を見積もり、家賃や改善費用を払って続けられるか確認します。数字が合わなければ、契約前に候補地や営業計画を見直しましょう。

シマナガ

調査表が埋まったことと、契約してよいことは別です。
事実・判断・未確認事項を分け、条件の合う候補を売上予測へ進めてください。
売上と費用が釣り合わなければ、契約前に計画を見直します。

甲斐承太郎

『よさそう』で一位を決めなくてもいいんだね。
まずは未確認のところを調べて、候補に残った場所で、何人のお客様を見込めるか考えてみるよ!

まとめ|家賃や人通りだけで決めず、お客様が来る道筋を確かめよう

アカガネ所長

家賃の安い物件も、お客様が来る条件と、弱点への対処が見えていれば候補に残せます。
最初から全項目を埋めようとせず、次の3点から始めましょう。

物件の見極め3点
  • 来る理由があるか。
  • たどり着いて入れるか。
  • 知ってもらう方法があるか。
シマナガ

家賃が安くても、狙うお客様が来る条件がなければ、その安さだけでは選べません。
反対に、郊外で大通りから離れていても、来店する理由があり、車で無理なく入り、停められ、店まで案内できるなら候補に残せます。
条件を確認した候補で売上を予測し、費用と釣り合うかまで確かめてから、契約を判断してください。

甲斐承太郎

まずは、気になっている路地裏を平日のお昼に歩いてみるよ。
近くで働く人がどこから来て、どのお店で食べているか。
それをメモして、入口までの道も確認する。
今度は『いい雰囲気だった!』だけで帰ってこないぞ。
……ランチを食べるなら、注文から出てくるまでの様子も見てこよう!

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